公益財団法人 日本野鳥の会

中国での鳥インフルエンザH7N9の感染発生と野鳥について

2013年4月10日発表

本年2月から、中国の上海など揚子江下流周辺で、鳥インフルエンザ(H7N9亜型)の人への感染が起こり、死亡者も出ていることが報道されています。身近な場所にやってくる渡り鳥のツバメが、この鳥インフルエンザウイルスを運んでくるのでは、と不安に思われている方もいらっしゃるようです。
しかし、この鳥インフルエンザがツバメから人にうつることは考えられません。小さな体で海を越え数千kmも旅をして日本にやって来るツバメたちを、温かく見守ってあげてください。

感染経路は、依然不明のまま

現地の市場で売られている家禽(食用のハト、ニワトリ、ウズラ)から感染者のものと同じウイルスが見つかっています。感染者の中には、家禽の調理や運搬に従事していた人も含まれていますが、そうでない人もおり、感染の経路は不明なままです。
これまで、鳥インフルエンザ(H7N9亜型)が野外で生活している野鳥から人へ直接感染した例はありません。野鳥の中では、カモ類などの水鳥が鳥インフルエンザを持っていることがありますが、これからの季節は、感染地域から日本に直接渡ってくる野鳥は少ないと考えられます。

ツバメを怖がる必要はありません。

鳥が鳥インフルエンザウイルスに感染した場合、1~2週間にわたって糞などにウイルスが出続けることがあります。そのような場合でも、体外に出されたウイルスは、他の鳥に感染しなければ、速やかに感染性を失います。また鳥インフルエンザウイルスは、日光(紫外線)や高温に弱い事も知られています。
鳥インフルエンザが鳥から鳥に感染することを繰り返していると、ウイルスは鳥の集団の中に保たれてしまいますが、春から夏にかけて、鳥たちは繁殖期に入り、ツバメなど多くの鳥はなわばりを作ってつがいごとの生活となり、鳥同士の接触も減ります。このような中では、もし渡ってきた時にウイルスを持っていた鳥がいたとしても、他の鳥に伝染する機会がないまま、体の中に抗体ができて、ウイルスも消滅してゆくと考えられます。

今回の鳥インフルエンザ(H7N9亜型)に、ツバメが感染した例はこれまでありません。ツバメは人家に営巣しますが、軒先など開放環境に営巣するので、ツバメどうしでの感染の心配はありません。またツバメが日本に到着してから、卵を産むまでにふつう1ヶ月以上が経過しますので、仮にウイルスを持ったツバメがいたとしても、そのウイルスがひなに伝染していくことはまず考えられません。

感染を防ぐためには、基本的な衛生管理を

WHO(世界保健機構)が、今回の中国に感染に関してQ&Aをだしており、国立感染症研究所のウェブサイトでみることができます。
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/a/flua-h7n9/2273-idsc/3394-h7n9-qa.html
今回の中国南部での感染を起こしているH7N9亜型の鳥インフルエンザウイルスは、従来鳥からしか見つからなかったH7N9亜型に比べて人に感染しやすく変化している可能性が指摘されていますが、WHOは、感染全般を防ぐためには「基本的な衛生管理」に従うことが重要であるとしています。

基本的な衛生管理

手指衛生:以下のような時には手を洗いましょう。

咳エチケット:

気になる方はツバメの巣の下などを清潔に

ツバメはヒナが大きくなると巣の下にフンを落とすようになります。鳥インフルエンザのリスクは小さいと思われますが、糞がたまるとその他の病気を防ぐためにも好ましくないので、時々掃除することをお勧めします。
巣の下に糞を受けるもの(古新聞などで十分です)を置いて、時々取り替えたり、掃除をすることで、清潔にしておくことができます。
また、鳥に直接触ったり、病気の鳥や死んだ鳥に近寄ったりすることを避けていれば、鳥インフルエンザも含めた感染症のリスクを減らすことができます。

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