公益財団法人 日本野鳥の会

特定外来生物法 詳細

特定外来生物法の施行規則案パブリックコメント募集への意見

(2005年3月7日提出)

[件名]外来生物法施行規則(案)について

[宛先]環境省自然環境局野生生物課

[氏名]財団法人日本野鳥の会 会長 柳生博

連絡先担当 自然保護室 金井 裕

[意見1]
1 意見の対象となる箇所
第三条一項

2 意見の概要
「動物園その他これに類する施設」を「公的な社会教育施設として法的な認定がされている動物園その他これに類する施設」とする。

3 意見及び理由
第1項にある博物館については、博物館法による定義があり、博物館相当施設については明確であるが、動物園については現状では法的にも一般的にも明確な定義ない。したがって、「動物園その他これに類する施設」という表記では、飼育施設の適用範囲が広範に含まれてしまい、法律による飼育規制の効果が不十分となる恐れがある。公的な社会教育施設として法的な認定がされている施設に限るように定義すべきである。

[意見2]
1 意見の対象となる箇所
第三条二項

2 意見の概要
「教育」を「公的な学校教育および社会教育」とする

3 意見及び理由
「教育」だけでは、その内容が不明確である。「公的な学校教育および社会教育」として、教育利用の範囲を明確にすべきである。

[意見3]
1 意見の対象となる箇所
第三条三項

2 意見の概要
「生業の維持」を「特定外来生物の指定の際に、既に当該特定外来生物の飼養等をしている生業の維持」とする。

3 意見及び理由
特定外来生物の性質から、生業として新たに飼育場所を増やすことがあってはならない。法律施行時に生業としている事業者に対する経過処置とすべきである。

[意見4]
1 意見の対象となる箇所
第四条五項ロ

2 意見の概要
「飼養個体の識別方法」を追加

3 意見及び理由
現在時では、特定生物ごとの飼養識別方法が明確となっていないが、ひとつの特定生物にたいして複数の飼養個体識別方法が選択されることが想定される。飼養許可の申請時に、飼養個体の識別方法を提示しておくべきである。

[意見5]
1 意見の対象となる箇所
第九条

2 意見の概要
「当該各号に該当するに至った日(第一号の場合にあっては、その事実を知った日)から三十日以内に、」を「当該各号に該当するに至った日(第一号の場合にあっては、その事実を知った日)から七日以内に、」とする。

3 意見及び理由
飼養人が死亡した場合では、相続人等が不明確な状態なまま飼養生物が遺棄される恐れがある。特定生物を飼養する者は、死亡や疾病により飼養が困難になった場合でも、飼養管理を行う体制を保持するため、死亡時等には速やかに新たな飼養責任者を決定する仕組みが必要である。また、使用許可時に供託金を設置するなどし、7日以内に飼養責任者が決まらなかった場合には、行政責任において飼養や殺処分を決定できるようにすべきである。

[意見6]
1 意見の対象となる箇所
第二十八条二項

2 意見の概要
(2)として「食物および採食行動、繁殖行動および繁殖場所」を追記

3 意見及び理由
未判定外来生物の生態系への影響評価については、生態系への影響の大きさを予見するために重要な採食生態や、定着の可能性を予見するために重要な繁殖生態について、明確に記載を求めるべきである。

以上

柳生会長からの手紙

合同シンポジウム「子孫に残そう日本の自然を! ~つくろう、ブラックバス駆除ネットワーク~」(2005.03.12 立教大学 主催:立教大学ウエルネス研究所、共催:自由民主党 自然との共生会議、全国内水面漁業協同組合連合会、生物多様性研究会)でのブラックバスの駆除よびかけに際して

合同シンポジウムにお集まりのみなさん、

私は、日本の自然とその中で暮らすいきものたちが大好きです。私は、必ずしも野鳥の専門家ということではありませんが、大好きな鳥やいきものたちとともに暮らしたい、その暮らしを守っていきたいという想いから、ものいわぬいきものたちの言わば応援団長として、日本野鳥の会会長という責を引き受けております。私は八ケ岳にある山小屋にいる時間がかなりあり、そこで多くの野生のいきものと暮らせることが、大きな喜びです。その喜びを、多くの人たちと分かち合いたいと思っています。

しかし、いきものの中に、人の持ち込みによる外来生物が多くなるのは困りものです。ヤンバルクイナやアマミヤマシギは、世界で南西諸島にしか住んでいない学術的価値も高い鳥たちですが、これらが今、マングースの猛威にさらされて、絶滅の危機にあります。三宅島では、本土から持ち込まれたイタチにより、アカコッコやオカダトカゲが危機にさらされています。また本州や九州の山林では、ソウシチョウやガビチョウが高密度で生息し、日本にもともといた鳥たちのさえずりを圧倒している状況です。

この度、環境省の尽力で外来生物法が出来ました。これによって、外来生物の輸入や飼育が制限されることにより、新たな侵入・拡大がとめられ、必要に応じて駆除が実施されることになりました。この法律の効果によって、変容してしまった日本の生態系の回復が図られることは、たいへん喜ばしいことです。日本野鳥の会は、WWFジャパン、日本自然保護協会などと一緒に、特定種に指定すべき外来生物のリストを提案しています。現在、特定種の指定候補に挙げられているのはこのリストの一部だけですが、今後、さらに特定種の充実に努めていただきたいと思っています。

この指定種の候補に、ブラックバスがあげられたことを聞いて、ほっとしています。というのは、ブラックバスは日本各地に広がり、その影響は鳥にも及んでいると考えられるからです。今日は、主任研究員の金井からご報告しますが、日本野鳥の会は、野鳥の保護のために、既に1980年代にブラックバス駆除を行っています。これは、日本におけるブラックバス対策としては、かなり早いものであったと思います。できるだけ早く対策を進めるために、ぜひ、指定種への指定を、皆さんと共に確実なものにしたいと思っています。

ブラックバスが短期間にこのように広がったのは、バス釣りを楽しむ人たちの関与があったとしか考えられません。釣りという趣味は自然とつき合うための良い方法のひとつです。しかし、釣りの楽しみを追究するあまり、外来の生物を自然の中に放してまわり、日本の生態系を変えてしまうというのは、決して行ってはいけないことです。野外で活動するには、まず日本の自然とはどのようなものなのかを十分理解し、その上で野生のいきものと人との関係はどのようなものであるべきか、考え続ける必要があります。

ブラックバスを日本の生態系に持ち込んで増やしてしまったのは、結局、私たち人間の責任です。ですからその対策のためには、我々が責任をもって、駆除を推進するほか方法がないでしょう。やむを得ないとは言え、駆除により多くの生命が失われるのは無論、つらいものがあります。その痛みを感じつつ、今後さらにこのような悲劇を起こさないように、努めるべきです。

私たち日本野鳥の会は創設以来、「野の鳥は野に」を基本として活動しています。野鳥が自然の中で生きる場を確保し、そこで人もいっしょに暮らすことが本来のあり方と考えています。鳥だけではありません。野生のいきものを安易に捕まえて移動させ、飼育し、それを放すという行為は、厳に慎むべきことです。ブラックバス駆除が新たな外来生物問題の防止ともなるように、今日ご参加のみなさまといっしょに決意したいと思います。

2005年3月12日

柳生 博


特定外来生物法-ブラックバスの規制種への指定を早期に!(緊急声明)

2005年1月21日、当会はWWFジャパン、日本自然保護協会と連名で、以下の緊急声明をマスコミ各社に公表しました。

2005年1月21日

緊急声明
オオクチバスは「特定外来生物」に指定すべきである

オオクチバスを、法施行時に特定外来生物に指定すべきである
という小池環境大臣の考えを強く支持する


現在、特定外来生物の第一陣選定作業が終盤に差し掛かっているところであるが、オオクチバスについては、経済的影響を心配する釣り業界の強い声やこれを支持する政治的な動きなどを背景として、1月19日のオオクチバス小グループ会合において、半年間の事実上の先送りと取られかねない意見の集約がなされた。
オオクチバスは言うまでもなく、日本の淡水生態系に大きな被害をもたらしてきた外来魚であり、日本において外来種対策の法律が制定される契機ともなった種である。4回にわたるオオクチバス小グループの会合において、研究者や日本魚類学会から生態系への被害や放流による分布拡大の実態を示す調査資料が提出されており、「特定外来生物被害防止基本方針」に規定する被害の判定の基準を満たしているため、現時点で先送りをする科学的な理由はないと言える。
本日、小池百合子環境大臣が、オオクチバスを先送りせず、本年6月の法施行時に特定外来生物に含めるべきであると発言されたことは、日本の自然環境を守るべき最高責任者としての英断であり、強く支持するものである。「バスは法律の目玉で、まず指定することが望ましい」「指定は、生態系を守るという法律の趣旨にも沿う」という発言を、我々は歓迎するものであり、今後環境省が、生態系への被害防止を第一義とする毅然とした態度を貫き、ほかの懸念される生物も含めて指定されることを期待する。
1月31日に予定されている第二回専門家全体会合で、すべての特定外来生物候補が出揃うことになるが、この小池環境大臣の発言と、オオクチバス小グループおよび魚類専門家会合の複数の委員から出た「すぐにでも特定外来生物に指定し、取り組みを開始するのが妥当である」という意見を汲み取り、前向きな議論の結果として、早期に指定されることを望む。

■本件に関するお問い合わせ先:
WWFジャパ  草刈秀紀(tel. 03-3769-1713)/大倉寿之(広報担当)
(財)日本野鳥の会 古南幸弘・金井裕 (042-593-6872)
(財)日本自然保護協会大野正人 (03-3265-0523)

特定外来生物法-輸入規制の対象となる生物リスト案を公表

(野鳥誌 No.682 2004年1月号 p.31)

 当会は2004年10月27日に、(財)世界自然保護基金ジャパン、(財)日本自然保護協会と連名で、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(特定外来生物法)に基づく外来種対策のための「特定外来生物に指定すべき生物の提案リスト」を公表し、環境大臣あてに要望書を提出しました。
「特定外来生物法」は、国外から持ち込まれた外来種による被害を防止するために2004年6月に制定されたもので、2005年春の施行に向けて具体的政策の準備が進んでいます。この法律で指定される「特定外来生物」は、生態系に与える影響が大きいと法律上認められる外来種のことで、輸入や飼育を禁止し、野外での防除対策等を行うことになっています。この指定は今後、専門家の検討会により検討が行われます。
外来種による生態系等への影響は、世界各国で深刻な被害をもたらすことが報告されており、IUCN(国際自然保護連合)では外来種問題を生物多様性を喪失させる原因の一つとして国際的なガイドラインを勧告しています。
わが国でも、鳥類について言えば、例えばヤンバルクイナがマングースに捕食され被害者となる一方で、飼い鳥用に持ち込まれたガビチョウやソウシチョウが逃げて日本各地の森林で繁殖し、優占種となって生態系を変えてしまうといった深刻な問題が起きています。当会はこうした点を踏まえて候補種リストを検討し、鳥類49種・分類群、全体では354種・分類群を盛り込みました。
当会は、今後も外来生物対策の進展に注目していきます。

「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」は環境省のホームページから閲覧できます。
「特定外来生物に指定すべき生物の提案リスト」はこちら

2004年3月9日、本会は世界自然保護基金(WWF)ジャパン、日本自然保護協会、地球生物会議と連名で、開会中の第159回通常国会に、環境省から提案され政府から提出される「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律案」に対し法案修正の要望書を提出しました。
要望は11項目からなり、政府が外来種対策の新法を設置することについて評価しつつ、生物多様性条約の第6回締約国会議における、外来種問題に関する指針原則に関する決議を参照しながら、予防原則の徹底と、透明性のある合意形成過程の実現、順応的で実効性のある防除事業の実施、国内における重要地域の保護のための修正点を述べています。
要望書の全文は、以下のとおりです。

2004年3月9日

環 境 大 臣
小池 百合子 殿

特定外来生物による生態系等に係る
被害の防止に関する法律案に対する要望書

(財)世界自然保護基金ジャパン
(財)日本自然保護協会
(財)日本野鳥の会
地球生物会議

拝啓 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。日頃、野生生物の保全にご尽力下さり誠にありがとうございます。
さてご承知のとおり、我が国は生物多様性条約の加盟国の一員として、国内および世界の生物多様性を保全において、その役割が大いに注目されてきているところです。
その意味で今般、環境省より「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律案」が今国会に上程される運びに到ったことは、誠に時宜を得たものであり、かつ我が国の生物多様性を保全する上において、大変重要な法案であると認識しております。
しかしながら私どもが法案の内容を拝見するに、いくつかの点で実効性を欠く面が見受けられました。つきましては、下記に改善すべき事項を提案申し上げますので、法案修正等、鋭意ご検討の程お願い申し上げます。

敬具

  1. 政令指定種を評価する科学委員会の設置:特定外来生物の政令指定にあたって、生物の性質に関し専門の学識経験を有する者から構成する科学委員会を設置し、生態系等への被害について評価を行うべきである(第2条関連)
    特定外来生物の政令指定のための評価判定は、当該生物に関する専門知識を持った学識経験者の意見を聞いて主務大臣が行うことになっておりますが、諸外国(ニュージーランド等)の場合、公平な判断を行うため、常設の科学委員会を設置されております。我が国では「種の保存法」において、本法律案と同様、希少野生動植物種の政令指定が行政裁量によって行われていますが、種の指定は順調に進んでいるとはいえず、政令指定種数は、レッド・データ・ブックの絶滅危惧種数のわずか2%にすぎません。
    特定外来生物の指定においては、新たな科学的知見が見つかれば、専門家やNGO等の申し立てにより、すぐに科学委員会が判定できる仕組みとする必要があります。
  2. 防除計画における合意形成:防除計画を立てるにあたって、関係都道府県だけでなく広く国民の意見を聞き反映させるための合意形成の手続きを盛り込むべきこと(第11条関連)
    現法律案では、防除計画の樹立の過程で国民の意見を反映させる手順について不明確であり、合意形成について明記されておりません。例えば鳥獣保護法の特定鳥獣保護管理計画の樹立について定められているような、審議会や公聴会といった計画の樹立過程における合意形成について明記すべきです。
  3. 防除事業の効果の判定:防除計画には、防除事業の効果の判定方法を盛りこむべきこと。(第11条関連)
    科学的・計画的、社会経済学的に判断し、順応的な防除事業が行われることが必要です。〈指針原則13 撲滅、14封じ込め〉
  4. 防除事業の評価委員会の設置:防除事業の実施結果の科学的評価を行うための評価委員会を設置すべきこと。(第11条関連)
    3~4は防除計画を科学的かつ順応的に進めていく上で必要不可欠の手順です。〈指針原則13 撲滅〉
  5. 鳥獣保護法の適用除外の条件:鳥獣保護法の適用除外を行うための条件を明記すべきこと。(第12条関連)
    現在、多くの都道府県で有害鳥獣捕獲の許可権限が市町村長におりていますが、現場の監視制度もなく、密猟や違法捕獲行為が多発しており、その捕獲が防除なのか、犯罪なのか、判別しようがない現状があります。こうした現状に加えて、特定外来生物防除の名の下に、標識のないワナがいたるところに仕掛けられた場合、錯誤捕獲、混獲、意図的な違法捕獲が入り交じり、在来の野生鳥獣の保護にも大きな支障をきたすことになります。
    外来生物の被害を防ぐという名目で違法行為を横行させない為に、ワナの標識の義務付け、混獲・錯誤捕獲の際の放鳥獣の措置、密猟・違法捕獲の防止の措置を行うべきです。また、違反行為には、罰則を科すべきです。〈指針原則15 防除〉
  6. 都道府県による防除計画:都道府県知事が、地域の状況に合わせて特定外来生物を特定し、防除する計画を定めることができるようにすべきこと。(第18条関連)
    南北に長く様々な植生帯にまたがる我が国の地理的特性から、外来生物の引き起こす問題は都道府県ごとに事情が大きく異なります。それに応じて防除事業における地方自治体の果たす役割も重要です。そこで、都道府県知事が当該都道府県の区域内おいて外来生物が著しく生態系等に被害を及ぼし、在来生物の生息状況に影響を及ぼしている事情、その他の事情を勘案して、当該外来生物を特定し、防除するための計画を定めることができるようにすべきです。〈指針原則2 3段階のアプローチ〉
  7. 不適正な防除の処罰:防除に関して適正を欠いた場合に認定取り消しを義務とし、また罰則を課すべきこと。(第20条関連)
    5と関連して、不適正な防除行為が行われた際の処罰を明確にしておくべきです。〈指針原則10 意図的導入〉
  8. 重要管理地域の設置:国内外来生物を含む全ての外来生物の持ち込みを禁止する「重要管理地域」の設置制度を設けるべきこと。(第3章関連)
    我が国の生物多様性の保全上重要な地域、例えば固有種・稀少種の多く生息する島嶼や自然保護区については、国内外来生物を含む全ての外来生物の持ち込みを禁止する「重要管理地域」を設けることが可能な制度を創設すべきです。
    現法案ではこのような規制の制度は、盛り込まれておらず、自然公園法等の改正によって、特別地域での外来生物放逐規制を行う構想とお聞きしていますが、例えば沖縄北部のやんばる地域のように、世界的に見ても希少な種が多数生息している地域で、自然公園に指定されておらず、しかも様々な外来生物による危機が現に起こり、また見込まれている重要地域も存在しています。
    生物多様性の保全上、特に重要な地域は「重要管理地域」とし、重要管理地域においては「重要管理地域外来生物管理計画」を策定し、外来生物の持ち込み等の規制などをすることができるようにすべきです。〈指針原則7 国境でのコントロールと検疫措置〉
  9. 未判定外来生物の判定における予防原則:有害性が完全に排除できない場合は、特定外来種に指定するよう判断すべきこと。(第22条関連)
    生物多様性条約における予防原則「科学的な確実性が十分にないことをもって、そのようなおそれを回避し又は最小にするための措置をとること」を考え判断すべきです。また、特定外来生物の指定と同様、未判定外来生物の判定においても専門家やNGO等の申し立てにより、すぐに科学委員会が判定できる仕組みとする必要があります。〈指針原則1 予防的アプローチ〉
  10. 未判定外来生物の判定期間の延長:当初の期間内に被害の可能性の判定が出来ない場合、6ヶ月の期間を延長できるようにすべきこと。(第22条関連)
    9~10は未判定外来生物のリスクについて、その生物に関する知見が不足しているために甘い評価が出てしまい、後に大きな被害を出すことを防ぐための予防的な措置として、科学委員会による検討の結果、再判定できる制度が盛り込まれるべきです。〈指針原則1 予防的アプローチ〉
  11. 未判定外来生物の申請者の立証責任:未判定外来生物の判定にあたっては、申請者の立証責任を明確にすべきこと。(第22条関連)
    未判定外来生物を特定外来生物に「指定する」か、「規制なし」にするかは、生物多様性を保全する上において、重要な決断となりますが、リスクを評価するためには、海外での事例等や生息地の情報を十分に集めなければなりません。この判定段階で、申請者が受益者負担を負い立証責任を明確にする制度が必要です。〈指針原則10 意図的導入〉

以上

※ 参考:生態系、生息地及び種を脅かす外来種の影響の予防、導入、影響緩和のための指針原則(生物多様性条約第6回締約国会議決議)

この件に関する問い合わせ先:
(財)世界自然保護基金ジャパン〈草刈秀紀〉
〒105-0014 東京都港区芝3-1-14日本生命赤羽橋ビル

03-3769-1772

(財)日本野鳥の会〈古南幸弘〉
〒191-0041 東京都日野市南平2-35-2WING鳥と緑の国際センター

042-593-6872

(財)日本自然保護協会〈吉田正人〉
〒102-0075 東京都千代田区三番町5-24 山路三番町ビル3F

03-3265-0523

地球生物会議〈野上 ふさ子〉
〒113-0021 東京都文京区本駒込5-67-9-504

03-5815-7522

【参考資料】

生態系、生息地及び種を脅かす外来種の影響の予防、
導入、影響緩和のための指針原則(仮訳)

生物多様性条約第6回締約国会議決議

はじめに

 この文書は、すべての政府、団体に対し、侵略的外来種の拡散と影響を最小化するための効果的な戦略を策定するための手引きである。各国はそれぞれ特有な問題に直面し、それぞれの状況に応じた解決方法を開発する必要性があるであろうが、指針原則は政府に対して明確な方向性と、目指すべき一連の目標を与えている。これらの指針原則がどの程度実行可能かは、最終的には利用可能なリソース(資金、人材など)がどの程度供給されるかによっている。指針原則の目的は、保全と経済的な発展という構成要素を統合したものとして、政府による侵略的外来種への対処を支援することにある。この15の指針原則は拘束力があるものではないので、この問題とその効果的な解決方法に関する知見が増えるにつれ、生物多様性条約の下での検討を通じて、容易に修正、拡張されるものである。
生物多様性条約第3条に従い、国際連合憲章及び国際法の諸原則に基づき、それぞれの国は自国の資源をその環境政策に従って開発する主権的権利を有し、また、自国の管轄又は管理下における活動が、他国の環境又はいずれの国の管轄にも属さない区域の環境を害さないことを確保する責任を有する。
以下の指針原則では、脚注に挙げられた用語が使用されていることについて注意が必要である。(*注)
また、この指針原則の適用に際しては、生態系は時とともにダイナミックに変化するものであり、種の自然分布は、人為によらなくても変化する可能性があるという事実を充分考慮しなければならない。

 (*注)以下の定義が使用されている。(i)“alien species”(外来種):過去あるいは現在の自然分布域外に導入された種、亜種、それ以下の分類群であり、生存し、繁殖することができるあらゆる器官、配偶子、種子、卵、無性的繁殖子を含む。(ii)“invasive alien species”(侵略的外来種):外来種のうち、導入(introduction)又は、拡散した場合に生物多様性を脅かす種(今回の指針原則では、“invasive alien species”は生物多様性条約締約国会議の決議V/8における“alien invasive species”と同じとみなす)(iii)“introduction”(導入): 外来種を直接・間接を問わず人為的に、過去あるいは現在の自然分布域外へ移動させること。この移動には、国内移動、国家間又は国家の管轄範囲外の区域との間の移動があり得る。(iv)“intentional introduction”(意図的導入):外来種を、人為によって、自然分布域外に意図的に移動又は放逐すること。(v)“unintentional introduction”(非意図的導入):導入のうち、意図的でないものすべてを指す。(vi)“establishment” (定着):外来種が新しい生息地で、継続的に生存可能な子孫を作ることに成功する過程のこと。(vii)“risk analysis”(リスク分析):(1)科学に基づいた情報を用いて、外来種の導入による影響とその定着の可能性を評価すること(すなわちリスク評価)、及び(2)社会経済的、文化的な側面も考慮して、これらのリスクを低減若しくは管理するために実施できる措置の特定をすること(すなわちリスク管理)。

A.総論

指針原則1 予防的アプローチ

 非意図的な導入の特定と予防においては、意図的な導入に関する決定と同様、侵略的外来種の経路と生物多様性への影響が予測不可能だとすれば、特にリスク分析に関しては、以下の指針原則に従った予防的アプローチに基づいて努力すべきである。予防的アプローチは、 年の環境と開発に関するリオ宣言の原則15及び生物多様性条約の前文で明らかにされたものである。
また、予防的アプローチは、すでに定着してしまった外来種の撲滅、封じ込め、防除措置を検討する際にも適用されるべきである。侵入種の様々な影響に関する科学的な確実性が欠如していることを、必要な撲滅、封じ込め、防除措置をとることを先延ばしにしたり、あるいは措置をとらない理由とすべきでない。

指針原則2 3段階のアプローチ

1 予防は、一般的に、侵略的外来種の導入や定着の後にとられる措置と比較してはるかに費用対効果が高く、環境的にも望ましい。
2 侵略的外来種は、国家間や国内での導入の予防を優先すべきである。侵略的外来種が既に導入されている場合には、初期の発見と迅速な行動がその定着を防止するために極めて重要である。望ましい対応はできるだけ速やかな撲滅(原則13)である場合がしばしばある。撲滅の実現が不可能あるいは撲滅のためのリソースが利用できない場合には、封じ込め(原則14)と長期的な防除措置(原則15)が実施されるべきである。(環境上の、経済的な、社会的な)利益とコストの検討は、長期的な観点でなされるべきである。

指針原則3 エコシステムアプローチ

 侵略的外来種に対する措置は、適当な場合には、締約国会議の決議Ⅴ/6に記述されたエコシステムアプローチに基づくべきである。

指針原則4 国の役割

1 侵略的外来種については、自国の管轄もしくは支配下での活動が、他国に対して侵略的外来種の潜在的な供給源となり得る危険性を認識し、種の侵略的な性質や侵略的になる可能性に関する入手可能なあらゆる情報の提供を含め、その危険性を最小限にするために必要な独自の行動や、協力の下に適切な行動をとるべきである。
2 そのような活動の例には以下のものが含まれる。
(a)他国への侵略的外来種の意図的な移動(たとえ、原産国では無害な種であったとしても)
(b)その種がその後(人間による媒介のあるなしにかかわらず)他国に分布を広げ侵略的となる危険性がある場合の自国への外来種の意図的な導入
(c)導入種が原産国では無害であったとしても、非意図的な導入につながるかもしれない活動3 各国は、侵略的外来種の拡散および影響を最小化することを援助するため、可能な限り侵略的になりうる種を特定し、その情報を他国が利用できるようにしなければならない。

指針原則5 調査とモニタリング

 問題に対処するための充分な知識の基礎を築くために、適当な場合には、各国が侵略的外来種に関する調査及びモニタリングを実施することが重要である。このような努力には、生物多様性のベースラインとなる分類学的研究が含まれるようにしなければならない。このようなデータに加え、モニタリングは新たな侵略的外来種の早期発見のために重要である。モニタリングには標的を絞った調査と全般的な調査の両者を含むべきであり、地域社会を含む他のセクターの参加によって効果が上がる。侵略的外来種に関する調査には侵入種の充分な同定を含むべきであり、以下のことを記述する必要がある。(a)侵入の経緯と生態(原産地、経路、時期)、(b)侵略的外来種の生物学的な特徴、(c)生態系、種、遺伝的レベルでの関連する影響、社会経済的影響、さらに時間経過に伴うそれらの影響の変化。

指針原則6 教育と普及啓発

 侵略的外来種についての普及啓発の推進は、侵略的外来種の管理を成功させるために極めて重要である。したがって、各国が侵入の原因と外来種の導入に伴うリスクについての教育と普及啓発の推進をすることが重要である。影響緩和措置が必要とされる場合には、地域社会や適切なセクターの団体をそのような措置の支援に従事させるために、教育と普及啓発を目的としたプログラムを実施すべきである。

B.予防

指針原則7 国境でのコントロールと検疫措置

1 各国は以下の点を確実にするために、侵略的な、あるいは侵略的になりうる外来種に対して国境でのコントロールと検疫措置を実施すべきである。
(a)外来種の意図的な導入は、適切な許可を必要とする(原則10)
(b)外来種の非意図的又は無許可の導入は、最小限に抑える
2 各国は現行の国内法や政策に従って、国内での侵略的外来種の導入をコントロールするために、適当な措置の実施を検討すべきである。
3 これらの措置は、外来種によってもたらされる脅威のリスク分析とその潜在的な導入経路に基づくべきである。既存の適当な政府機関あるいは権限を有する組織は、必要に応じて強化、拡大され、職員はこれらの措置を実施できるように適切な訓練を受けるべきである。早期発見システムと地域や国際的な連携は予防に不可欠である。

指針原則8 情報交換

1 各国は、外来種の予防、導入、モニタリング、影響緩和の活動をする際に利用される情報を編纂し普及させるために、インベントリー(目録)の開発、分類や標本のデータベースを含む関連するデータベースの統合、情報システムと相互運用可能な分散型のデータベースのネットワークの開発を支援すべきである。この情報には、事例リスト、近隣国への潜在的なリスク、侵略的外来種の分類、生態、遺伝的特徴、防除方法の情報を、利用できる限りいつでも、含むべきである。これらの情報は、世界侵入種プログラムによって編纂されているような国内の、地域的な、国際的な指針、手順、勧告と同様に、特に生物多様性条約クリアリングハウス・メカニズムを通じて広く普及が促進されるべきである。2 各国は外来種に対する特別な輸入の要件に関する情報、特に侵略的であると特定されている種の情報を提供し、他の国で利用可能にしなければならない。

指針原則9 能力構築を含む協力

 状況次第であるが、国の対応は単に国内だけのこともありうるし、二国間かそれ以上の国による協力を必要とすることもある。それらの協力には以下のようなものが含まれるであろう。
(a)特に近隣諸国間、貿易相手国との間、類似した生態系や侵入の歴史を持っている国の間での協力に重点を置き、侵略的外来種に関する情報、潜在的な不安、侵入の経路に関する情報を共有するためのプログラム。貿易相手国が類似した環境である場合には、特に注意すべきである。
(b)特定の外来種の取引、特に有害な侵入種を対象とした取引を規制するために、二国間又は多国間で協定を結び、それを利用すべきである。
(c)各国は、外来種の導入と定着が起こった場合のリスクを評価し減少させ、その影響を緩和するために必要な専門的技術や、財政面も含めリソースが不足している国に対する能力構築プログラムを支援すべきである。そのような能力構築には、技術移転や研修プログラムの開発が含まれる。
(d)侵略的外来種の特定、予防、早期発見、モニタリング、防除に向けた共同調査や出資。

C.種の導入

指針原則10 意図的導入

1 ある国において、実際に若しくは潜在的に侵略性のある外来種の意図的な最初の導入、又はその後の導入は、受け入れ国の権限ある当局からの事前の許可なくして行われるべきではない。提案された国への導入あるいは国内の新しい生態学的な地域への導入を許可するかしないかを決定する前に、環境影響評価を含む適切なリスク分析を評価プロセスの一部として実施するべきである。各国は、あらゆる努力を払って、生物多様性を脅かさないと考えられる外来種についてのみ導入を許可すべきである。その導入が生物多様性への脅威にはならないことを立証する責任は、導入の提案者にあるとすべきだが、それが適当な場合には受入国側が負うべきである。導入の許可には、それが適当であれば、条件を付すことができる(例えば、影響緩和計画、モニタリング手続き、評価や管理のための資金、封じ込めのための要件)
2 意図的な導入に関する決定は、リスク分析の枠組みを含めて、 年の環境と開発に関するリオ宣言の原則15及び生物多様性条約の前文で言及された予防的アプローチに基づくべきである。生物多様性の減少若しくは損失の脅威のある場合には、外来種に関して充分に科学的な裏付けがないことや知識が不足していることによって、権限ある当局が、侵略的外来種の拡散と悪影響を予防するために、そのような外来種の意図的な導入に関する決定を下すことを妨げられてはならない。

指針原則11 非意図的導入

1 すべての国は非意図的導入(または定着して侵略的になった意図的導入)に対処するための適切な対策をとるべきである。それらには、法律や規制措置、適切な責任を有する組織、機関の設立と強化が含まれる。迅速かつ効果的な活動ができるように、運営のためのリソースは充分であるべき。
2 非意図的導入をもたらす共通の経路を特定する必要があり、そのような導入を最小限にするための適切な対策をとるべきである。非意図的導入の経路には、しばしば、漁業、農業、林業、園芸、海運(バラスト水の放出を含む)、陸上・航空輸送、建設事業、造園、観賞用を含めた水産養殖、観光、ペット産業、野生動物牧場など、様々な分野の活動が関わっている。これらの活動の環境影響評価では、侵略的外来種の非意図的導入のリスクにも触れるべきである。侵略的外来種の非意図的な導入のリスク分析は、そのような経路に対して適切に実施されるべきである。

D.影響緩和

指針原則12 影響緩和

 侵略的外来種が定着していることが分かった場合には、各国は、独自に又は協力して、悪影響を緩和するために撲滅、封じ込め、防除の適切な段階で措置を講ずるべきである。撲滅、封じ込め、防除に使われる技術は、人間、環境、農業にとって安全であり、同時に、侵略的外来種によって影響を受ける地域の利害関係人に倫理的に容認されるものでなければならない。影響緩和措置は、予防的アプローチに基づいて、侵入のできるだけ初期の段階で行われるべきである。導入に責任のある個人あるいは法人は、自国の法律や規則に従わなかったために侵略的外来種が定着した場合、自国の政策や法律に従って、侵略的外来種の防除措置の費用や生物多様性の回復の費用を負担しなければならない。従って、潜在的なあるいは既知の侵略的外来種の新たな導入の早期発見は重要であり、それは迅速に次段階の行動をとる能力を伴うものである必要がある。

指針原則13 撲滅

 実現可能である場合には、撲滅は、侵略的外来種の導入と定着に対してとるべき最良の行動である場合が多い。侵略的外来種を撲滅する最良の機会は、個体群が小さく、地域的な分布にとどまっている侵入の初期の段階である。そのため、リスクが高い導入地点に焦点を絞った早期発見システムが最も有効であり、また撲滅後のモニタリングも必要である。撲滅事業を成功させるためには、地域社会による支援が不可欠な場合が多く、特に、協議によって行われた場合、効果的である。生物多様性への二次的な影響に対しても考慮がなされるべきである。

指針原則14 封じ込め

 撲滅が適当でない場合、侵略的外来種の拡散の防止(封じ込め)は、その生物や個体群の分布域が小さく、封じ込めが可能な状況では、しばしば適切な戦略となる。定期的なモニタリングが不可欠で、新規の大発生を撲滅する迅速な行動と関連している必要がある。

指針原則15 防除

 防除措置は、侵略的外来種の数を減らすと同様に、生じる被害を減らすことに重点を置くべきである。防除は、既存の国内規則、国際的取り決めに従って実施される、機械的防除、化学的防除、生物的防除、生息地管理を含む総合的な管理技術によって行われることが効果的であることがしばしばある。

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