2011年5月の鳥獣保護事業計画「基本指針」案に意見を提出しました
平成23年5月12日(木)から6月10日(金)までの間、環境省が実施した「鳥獣の保護を図るための事業を実施するための基本的な指針」(案)に関する意見の募集(パブリックコメント)に対し、当会は野鳥保護の観点から、次の意見を提出いたしました。
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=13766
提出した意見
[件名]基本指針案に関する意見
[宛先]環境省自然環境局野生生物課鳥獣保護業務室
[氏名]公益財団法人 日本野鳥の会 (担当:自然保護室長 葉山政治)
[意見]
I 鳥獣保護事業の実施に関する基本的事項」への意見
該当箇所 |
p.16 第一 3 (2) 人と鳥獣の適切な関係の構築 |
意見の要約 |
鳥獣被害の発生の分析とその対処方法についての普及・啓蒙; |
意見及び理由 |
農業や生活環境被害の防止において、野生鳥獣の生態や被害発生のメカニズム、対処方法に関する知識の不足から、ハス田における羅網被害の放置や、自治体によるサギ山(サギ類の集団営巣地)の違法な駆除に代表されるような脱法状態が長く継続したり、違法行為が発生したりしている。有害鳥獣捕獲の許可権限が市町村に移されたが、鳥獣被害管理について知識、経験、情報が不足していることに起因しているものと思われる。有害鳥獣捕獲や鳥獣被害防止特措法の対象となった鳥獣による被害の発生状況を環境省として分析すべき。またこれに基づいて、生態や被害発生のメカニズム、対処方法に関して、都道府県や市町村に対して必要な情報を提供し研修を行うことを強化すべきである。 |
該当箇所 |
p.25 I 第二 2 (3) 渡り鳥及び海棲哺乳類 |
意見の要約 |
ボン条約への加盟の促進 |
意見及び理由 |
関係国との国際的な連携・協力を図るとされている趣旨に則り、国として、「移動性野生動物種の保全に関する条約(ボン条約)」への加盟を促進し、この条約に基づく「アホウドリ及びミズナギドリの保護に関する協定」の批准に務めること。生息地を保全するラムサール条約と種そのものを保護するボン条約は野生鳥獣保全の両輪であり、併せて推進すべきである。 |
該当箇所 |
p.27 I 第二 3鳥獣保護に関する調査研究の推進 |
意見の要約 |
これまでの情報の集積が少ない鳥獣として海鳥の情報収集の必要 |
意見及び理由 |
海鳥は海棲哺乳類同様、集団繁殖地の情報はあるものの、非繁殖期の分布情報の集積が極端に少ない鳥獣であり、国及び都道府県においてそれらの種の生息状況等に応じて適切な調査を実施するとともに、関係機関との連携を図りつつ、既存の情報の収集を図る必要がある。今後、増大が見込まれる洋上風力発電の効率的な導入のためにも、必須事項と思われる。 |
該当箇所 |
p.27 I 第三 1 (1)広域的な鳥獣保護管理の考え方 |
意見の要約 |
カワウの広域保護管理指針の策定および広域協議会の設置による検討 |
意見及び理由 |
鳥獣の広域的な保護管理計画について、移動能力の高いカワウについては特に、広域協議会の設置による検討及び広域保護管理指針の策定を推進すべき。現状認識にも記載されているように、カワウの広域協議会の設置と広域管理計画の立案は2地域に過ぎず、併せて財政上の制約から広域協議会もしりすぼみである。特定鳥獣保護管理計画の樹立も進んでいない。他方、カワウの分布は拡大しており、広域的な保護管理に取り組む必要性が以前より増している |
該当箇所 |
p.39 I 第五 1 (1) 鳥獣保護区の指定及び管理の考え方 |
意見の要約 |
潜在候補地のリスト化 |
意見及び理由 |
ラムサール条約湿地の潜在候補地が既に選定されているように、他の基準による鳥獣保護区、森林鳥獣生息地 大規模生息地 集団渡来地 集団繁殖地 希少鳥獣の保護区 生息地回廊に関しても、同様に潜在候補地を検討し、指定に向けてのリスト化すべき。鳥獣保護区は科学的なデータをもとに設定すべきであり、また指定状況が十分であるかの評価しつつ推進すべきである、そのため科学的なデータに基づいた候補地リストを整備すべきである。 |
該当箇所 |
p. 39 I 第五 鳥獣保護区の指定及び管理 |
意見の要約 |
海鳥繁殖地などの集団繁殖地を特別保護指定区域に |
意見及び理由 |
海鳥繁殖地などの集団繁殖地については、人の立ち入りによる撹乱が大きな悪影響を与えることが多く、繁殖が失敗に到る場合があるので、種、期間などを勘案した形で、特別保護指定区域を設定し、意図しない人の立ち入りによる撹乱を防ぐべき。 |
該当箇所 |
p.55 I 第十二 その他鳥獣保護事業の実施のために必要な事項4 愛玩飼養の取扱い |
意見の要約 |
愛玩飼養の全面禁止に向けて法整備のロードマップを示す |
意見及び理由 |
「自らの慰楽のために飼養する目的で野生鳥獣を捕獲することについては、密猟を助長するおそれがあることから、原則として許可しないこととする。このため、これまで一部認められてきた愛玩のための飼養を目的とする捕獲等については、今後、廃止を検討する。」とされており、許可しない方針を明示されたことを強く支持する。しかし今後の廃止については、より具体的に「全面禁止に向けて、2年を目処に法整備を行う」等の方向性と年次を明確にした記述に改めるべき。 |
II 鳥獣保護事業計画の作成に関する事項」への意見
該当箇所 |
p.56 II 第二 鳥獣保護区、特別保護地区及び休猟区に関する事項 |
意見の要約 |
鳥獣保護区の設置情報の公開の充実 |
意見及び理由 |
鳥獣保護区の設置や管理の効果を高める、市民への普及や監視などを充実させるためにも、鳥獣保護区の設置情報の公開の充実が必要。特に通称ハンターマップは、狩猟従事者が有料で購入するものであり、一般の市民の目に触れることがないことからマップに記載されている情報をインターネット等を通じて多くの市民が情報を共有できるようにすべきである。 |
該当箇所 |
p.65 II 第二 5 特別保護指定区域 |
意見の要約 |
海鳥繁殖地などの集団繁殖地を特別保護指定区域に |
意見及び理由 |
海鳥繁殖地などの集団繁殖地については、人の立ち入りによる撹乱が大きな悪影響を与えることが多く、繁殖が失敗に到る場合があるので、種、期間などを勘案した形で、特別保護指定区域を設定し、意図しない人の立ち入りによる撹乱を防ぐべき。 |
該当箇所 |
p.76 II 第四 2 (2) ④ その他特別な事由を目的とする場合 |
意見の要約 |
愛玩飼養の全面禁止に向けて法整備のロードマップを示す |
意見及び理由 |
「鳥獣の愛玩飼養は、鳥獣は本来自然のままに保護すべきであるという理念にもとるのみならず、鳥獣の乱獲を助長するおそれもあるので、飼養のための捕獲又は採取の規制の強化に努めるものとし、今後、廃止する方向で検討するものとする。」と許可しない方針を明示されたことを強く支持する。しかし今後の廃止については、より具体的に「全面禁止に向けて2年を目処に法整備を行う」等の方向性と年次を明確にした記述に改めるべき。 |
該当箇所 |
p.76 II 第四 2 (2) ④ 4) 愛玩のための飼養の目的 |
意見の要約 |
愛玩のための飼養の目的の捕獲は許可すべきでない |
意見及び理由 |
愛玩のための飼養の目的の捕獲は原則ではなく、既に多くの都道府県で行われているように、例外なく不許可とすべき。このため、この 4) の全文及び関連の許可条件の部分を削除すべきである。 |
該当箇所 |
p.103 II 第四 6 (4) 愛玩のための飼養の目的 |
意見の要約 |
例外措置の削除 |
意見及び理由 |
愛玩のための飼養を認める例示として「野外で野鳥を観察できない高齢者等に対し自然とふれあう機会を設けることが必要である」は野生鳥獣をコンパニオンアニマル化することにつながり、理由として不適当。高齢者等が自然に触れ合う手段としては、別の手法で解決すべき事柄であり、この部分は削除すべきである。 |
該当箇所 |
p.111 II 第五 4 指定猟法禁止区域 |
意見の要約 |
鉛製銃弾の指定猟法禁止区域指定の拡大 |
意見及び理由 |
オジロワシ、オオワシへの鉛製銃弾による鳥獣の鉛中毒が依然として生じている現状から、積極的に鉛製銃弾の指定猟法禁止区域として指定の拡大を行うとすべきであり、併せて狩猟者への鉛汚染の鳥獣への危険性の認識の普及を進めるべき。 |
該当箇所 |
p.124 II 第六 10 計画の実行体制の整備 |
意見の要約 |
鳥獣保護センターの機能の充実とそのための人材の配置を図るべき |
意見及び理由 |
都道府県が設置する鳥獣保護センターには、本指針案p.133にあるように、傷病鳥獣の保護等を通じた鳥獣に関する各種調査研究及び普及啓発を含む鳥獣保護管理の拠点とすることを目的として設置されている場合も多いが、鳥獣保護管理事業のモニタリング機能など科学的保護管理のための調査、解析機能を持たせるなど、鳥獣保護センターの機能の充実とそのための人材の配置を図るべき |
該当箇所 |
p.127 II 第七 (3)ガン・カモ・ハクチョウ類一斉調査 |
意見の要約 |
適切な調査員とチェック機関の必要 |
意見及び理由 |
ガン・カモ・ハクチョウ類一斉調査は、全国的なガン・カモ・ハクチョウ類の生息状況を把握するための重要な情報であり、また高病原性鳥インフルエンザへの対応を考える上でも重要な情報源である。しかしながら、種の誤認など明らかに誤った情報も多く見受けられる都道府県も見られることから、調査の適正な実施のための人材確保と適正な報酬の設定が必要。都道府県において科学的な調査を実行するのに適切な調査員を選定し、また調査結果をチェックするための適切な専門家による委員会などによるチェックを行うことが望ましいことを明記すべき。 |
以上