

世界自然保護会議の会場
2025年10月9~15日まで、アラブ首長国連邦のアブダビで開催された、IUCN(国際自然保護連合)の世界自然保護会議で、日本野鳥の会とアメリカのThe Pew Charitable Trustsが提出した、プラスチック汚染への行動を呼びかける動議 059 ”Advancing actions to end plastic pollution to protect human health, biodiversity and the environment:人間の健康、生物多様性、自然環境を守るために、プラスチック汚染に終止符を打つための行動を推進する”が採択されました。
世界自然保護会議は、政府、科学者、NGO、そして企業関係者が、世界の自然保護や環境政策について話し合い、方向性を決定する会議で、4年に一度開催されます。今回はIUCN会員(政府、NGO)、科学者・専門家を含む約10,000人の参加がありました。
IUCNの会員団体は、この会議に、自然保護上の課題や政府・会員団体が取り組むべきことを「動議(モーション)」として提出することができます。提出された動議は、ワーキンググループでの承認を経てオンライン議論の後、多くは事前の電子投票で採否が決まります。オンライン議論で意見が分かれた動議は、会員総会でさらなる議論となり、当会の動議を含め約40件がアブダビでの総会に進みました。

会員総会投票でのモーションの議論と投票の様子
会員総会に進んだ動議は、動議ごとに「コンタクトグループ」と呼ばれる作業部会が設定され、議論と文案の修正が行われます。動議059の原文は、プラスチックの生産削減を数値目標とともに求め、INC-5.2(※)で合意に至っていないプラスチック国際条約の迅速な締結と強化を促す野心的なものでした。しかし「削減」という言葉をめぐって意見が分かれ、第一回コンタクトグループでは合意することができませんでした。
「削減ではなく、持続可能な『消費と生産の促進』とすべき」「『削減』を含むパラグラフ全体を削除すべき」といった意見が出され、文案には多くのブラケット(まだ合意がなされない文言箇所に [ ] をつけること)やオプションが加筆され、見通しが立たないまま二回目のコンタクトグループに持ち越されました。
第二回コンタクトグループでもなかなか着地点が見出せませんでしたが、延長の末、何とか「プラスチックの一次生産(および消費)を持続可能なレベルに削減する」という表現で、合意することができました。
そのほか、多少の修正はあったものの、最も重要な「削減」という言葉を残すことができ、使い捨てプラスチックや、健康や環境に対して懸念される化学物質を含め、問題のあるプラスチック製品を段階的に廃止・制限することを強調することができました。さらに、国際プラスチック条約について「プラスチックのライフサイクル全体を対象とする国際的に法的拘束力を持つ文書を迅速に締結・署名・批准・実施し、さらに時間をかけて強化し続けるよう強く要請する」という強いメッセージを残すことができました。
※プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第5回政府間交渉委員会再開会合。2025年8月にスイス・ジュネーブで開催されたが、産油国などの少数の強い反対があり、合意できなかった。

モーション059承認の投票結果(政府会員「左:Category A」と、NGO・先住民会員「右:Category B+C」を別に集計 IUCN WCC2025のウェブサイトより

会員総会では、動議059に修正提案は出されず投票に進み、政府、NGOそれぞれで過半数の賛同を得て採択されました。採択された動議は、IUCNの『勧告』や『決議』となり、IUCNの政策の主体となります。
加盟国に対しての法的な拘束力はありませんが、ここで決まったことはIUCNによる世界の自然保護の重点事項として、各国の政策に影響を与えます。動議059の採択を、プラスチック汚染への国内外の政策を後押しし、引き上げるものにできるよう、今後の政策提言活動に活かしていきます。
プラスチックの生産量が急増しており、対策が講じられない場合、河川や海洋中のプラスチック量は2020年の1億5,200万トン(Mt)から2040年には3億トンに倍増し、プラスチック廃棄物は2040年までにほぼ6億トンに倍増するとの予測に警鐘を鳴らす。
南極大陸と南極海を含む自然環境において、マイクロプラスチックおよびナノプラスチックを含めプラスチックがあらゆる所に存在し、プラスチックのライフサイクル全体が、海洋生物を含む生物多様性、人間の健康、人々の生活、気候、環境的・社会的正義に影響を与えていることを認識する。
あらゆる環境で1,500種を超える動物がプラスチックを摂取していることを確認する研究が存在し、プラスチック汚染が海鳥などの海洋生物に対する深刻な脅威であることを認識する。
プラスチックに使用される、または含まれる4,200種類以上の化学物質が、人間の健康や環境に対して懸念があることを示す研究があることを、さらに認識する。
プラスチックの摂取による野生動物への化学物質の影響を懸念し、海鳥がプラスチック添加物に曝露されていることを示す研究があることを指摘し、海洋生物における化学物質汚染は海洋ごみの摂取に由来することを強調する。
一次プラスチックの生産および消費の削減、そして持続可能な生産・消費の促進が、プラスチック汚染の終結と地球の平均気温上昇を1.5℃未満に抑えるという世界的目標の達成に寄与することを強調する。
使い捨てや寿命の短いプラスチック製品が主流の大量廃棄モデルがプラスチック汚染の主要な要因となっていることを認識する。
プラスチックの環境への流出を終わらせるための解決策の多くは既に存在するが、プラスチックのライフサイクル全体を対象とした法的拘束力のある統一的でグローバルな措置が必要であり、それにより官民双方の実施を促進し公正な競争条件を整えることが重要であると強調する。
IUCN決議7.019「2030年までに海洋環境における世界的なプラスチック汚染の危機を止める」(マルセイユ、2020年)を想起し、メンバーに対し、2030年までに海洋環境における世界的なプラスチック汚染の危機を阻止する行動を取るよう促す。
さらに、2022年国連環境総会決議5/14で、プラスチックの全ライフサイクルに対応する包括的なアプローチにもとづき、海洋環境を含むプラスチック汚染に関する国際的な法的拘束力のある文書を作成するため、政府間交渉委員会を招集することが国連環境計画事務局長に要請されたことを想起する。
さらに、政府間交渉委員会が予定された2024年末までにその作業を完了できなかったため、緊急に必要な国際的な行動が遅延していることを憂慮する。