2024年12月12日
11月17日、RSPB(英国鳥類保護協会)、バードライフ・インターナショナル他の研究者グループは、シロハラチュウシャクシギ Numenius tenuirostris が1995年にモロッコで最後に目撃されて以来、広範囲で行われた調査でも生息の確認がなく、絶滅した可能性が高いと指摘する論文を発表しました1)。これまで島嶼に生息する鳥で絶滅した例はいくつもありますが、ユーラシア大陸、アフリカ大陸に生息する鳥類が絶滅した最初の例となります。
シロハラチュウシャクシギの情報はほとんどなく、ロシアのオムスクのステップと森林地帯の境界付近が繁殖地として確認されており、アフリカ北部から西アジアで越冬していたとされています。日本では、確実な産地、年月不明の2標本があるだけで、最近50年以上確実な記録はありません。
絶滅の要因は明らかではありませんが、農業のための広範囲な土地の乾燥化や中継地、越冬地での生息地の喪失、狩猟による捕獲がおもな原因ではないかと推測されています。
RSPBのレポートでは、シロハラチュウシャクシギの絶滅は、同じように絶滅の危機にある種への行動が必要だと、私たちに警鐘を鳴らしていると結んでいます2)。生物多様性の損失を止め、向上させる取り組みを更に続けなければならないことへの警鐘でもあるでしょう。
国内に目を転じてみます。10月25日の生物多様性条約の第16回締約会議(COP16)の際にIUCN(国際自然保護連合)がレッドリストの更新を公表しました。日本産鳥類でもいくつかの種で絶滅のおそれが高まったと評価されましたが、それらはすべてシギ・チドリの仲間でした。
種名 | 以前のカテゴリ | 今回のカテゴリ |
---|---|---|
ダイゼン | 低懸念 | 危急 |
キョウジョシギ | 低懸念 | 準絶滅 |
キリアイ | 低懸念 | 危急 |
アシナガシギ | 低懸念 | 準絶滅 |
サルハマシギ | 準絶滅 | 危急 |
ハマシギ | 低懸念 | 準絶滅 |
コモンシギ | 準絶滅 | 危急 |
オオハシシギ | 低懸念 | 準絶滅 |
アメリカオオハシシギ | 低懸念 | 準絶滅 |
コキアシシギ | 低懸念 | 危急 |
オオキアシシギ | 低懸念 | 準絶滅 |
日本を越冬地または渡りの中継地として利用するシギ・チドリ類の減少要因として、生息地である湿地の消失が指摘されています。日本では、明治・大正時代に存在した湿地の約61.1%が1999年までに消失しました。彼らを守るためには、生息環境がこれ以上失われることがないようにし、かつ湿地の復元に取り組む要があります。
そのための活動のひとつとして、当会をはじめとしたNGOでは、大阪万博を契機に大阪湾の湿地環境の再生に向けて取り組みを行っています。鳥類の絶滅のおそれをこれ以上増大させないための取り組みに、ぜひ、ご支援をお願いいたします。