

農林水産省は、8月7日に2025年度の日本の食料自給率を公表しました。それによると、カロリーベースでは前年より1%低下して37%だったそうです。
内容を細かく見ると、主食であるコメは96%で自給率がもっとも高いものでした。主菜の一つである畜産物は17%でしたが、これは輸入飼料によるもの(49%)を除いた数値となっています。
ちなみに、肥料は作物にとって「飼料」に相当しますが、日本は化学合成肥料の原材料のほとんどすべてを海外からの輸入に頼っています。もし、化学合成肥料を用いて栽培された作物を除いたとしたら、実際の自給率はどのくらいになってしまうのでしょうか。
日本の食料自給率の目標値は、2025年4月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」によれば、2030年に45%となっています。昨今の社会情勢の不安定化に起因して食料安全保障の確保の観点からも食料自給率向上が目指されていますが、国内に存在する有機物を有効活用して行われる有機農業も、その目標達成に貢献すると考えられます。
このように、有機農業は慣行農法よりも環境負荷が低減されるものとして、「みどりの食料システム戦略」では2050年に100万ヘクタール(または耕地の25%)で取り組まれていることが目標とされています。環境負荷低減に効果があり、人にもやさしい有機農業の推進は、私たちも応援しています。
農地は多くの野鳥の生息地としても重要ですが、その農地において有機農業の取り組み面積が増えていけば野鳥をはじめとする生物の多様性は向上するか、というと必ずしもそうではなく、方法や時期によっては影響を与えてしまう場合もあります。
例えば、みどりの食料システム戦略で戦略実現に向けた主な取り組みとして紹介されている水田での「中干し(※)期間の延長」では、水を抜く期間が通常よりも長く設定され、カエル類や水生生物に影響を及ぼすことが指摘されています。
そこで、私たちは有機農業を推進する際にも、環境負荷低減の一環として生物多様性への影響を考慮していくことが必要と考え、以下のような方針案全体に対する意見をはじめとして7つの意見を提出しました。
有機農業の推進に関する法律では、有機農業は「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業」と定義されており、それを受けて、本基本方針(案)においても有機農業を推進することで環境負荷低減が実現することが前提になっています。
しかし、営農方法によっては有機農業であっても生物多様性に影響を与えるトレードオフが存在する場合があります。さらに、圃場の大区画化による環境の多様性の低下、水路など付帯設備の近代化等による環境の変化が生物多様性に影響を与える場合もあります。
したがって、圃場だけでなく周辺の農地環境まで含めた広い視点から、有機農業の推進に合わせて生物多様性保全へのトレードオフを正確に把握し、その軽減、解消を同時に進める必要があります。そこで、本基本方針(案)全体を通じて、トレードオフがあった場合にどのように対処するのかも明記してください。
当会が提出した意見は、次のリンクからご確認ください。
※中干しは、田植えから1か月ほど経過したときに一時的に水田から水を抜くことで、イネの成長を調整するために行われます。中干しを行うことで、イネの根が強く張り倒伏しにくくなる、下葉枯れや倒伏、品質低下や収量低下の原因になる過剰分げつを防ぐ、メタンなど根に有害なガス発生を抑え土中にある有害ガスを大気中に放出させる(メタンは温室効果ガスでもある)、土壌を固め収穫時の作業効率を向上させることができます。
一方で、水生生物に影響を与えることから、中干しの時期をトンボ類の羽化、カエル類の変態後に行う「中干し延期」や水田の周囲に「江」を設置して水生生物の避難場所を作る、といった生物多様性に配慮した取り組みも行われています。