現在、地球温暖化防止のための自然エネルギーとして、世界的に風力発電施設の導入が進んでいます。しかし騒音や景観、野生動物への影響を懸念する声が増えてきたこと、また風況がよく送電系統を確保しやすい場所での建設が進んだことで、欧州や日本など国土の狭い国では近年、陸上での建設適地が減少しています。そのため現在は、陸上よりも風況がよく安定しており、近隣住民への騒音問題も発生しにくい洋上風力発電の導入が各国で注目されています。特に、英国とデンマークは積極的に洋上風力発電の導入を進めており、すでにどちらの国でも300基以上の洋上風力発電が建設されています。
一方、わが国では環境省や経済産業省、NEDOによる洋上風力発電の技術研究開発がはじまったばかりです。これまでに国内では海岸近くや港湾内
≪3ヶ所、12基の洋上風車が建てられているものの、沖合では実証実験用のものが最近、建てられました。技術研究開発の中では洋上風力発電の建設に伴う事前の環境影響評価技術についても研究されていますが、国内では沖合洋上風力発電の経験がないため、方法論について暗中模索の状況が続いています。
洋上風力発電の先進国では、建設の前後に環境影響評価を行い、海鳥などに与える影響を予測、評価して保全対策を立てています。海外でも海鳥に対し適切な影響予測に資する情報が少ないと言われていますがそれでも、調査の方法論およびその結果のデータ蓄積は日本よりもはるかに進んでおり、経験のない日本で環境影響評価の方法を確立するにはまず、先進事例から学ぶのが早道です。
そこで、今後、国内でも大きく導入が進むと考えら
??る洋上風力発電について、日本でも適用可能で、野鳥への影響をなるべく出さない洋上風力発電の開発のあり方を提案するために、海外から知見を学ぶためのシンポジウムを開催いたしました。本資料集は、そのシンポジウムの講演録です。
●目次●
政府等による風力発電実証事業
国内外の法アセス制度とその課題
野鳥の生態、影響とその調査方法
野鳥との共存と影響評価(パネルディスカッション)……161