風力発電事業の環境影響を回避・低減するには、適切な立地選定、つまり大きな環境対立が予想される場所への立地を事前に回避することが最も重要です。風力発電施設が鳥類に与える影響を左右する最大要因は風車の立地場所であり、欧州諸国ではこれまでに風車が鳥類に影響を及ぼした繁殖妨害や生息地放棄等の事例を蓄積し、鳥類が風力発電の建設による影響を受けやすい場所を示すような、センシティビティマップ作りが行われています。
風力発電の先進国と言われる国々では、地域の環境保護のみならず、風力発電の導入促進の観点からもセンシティビティマップ作りの必要性が指摘されています。一方、日本ではセンシティビティマップ作成の体系的な方法論が確立していないため、我々が欧州諸国からマップ作成の取組みについて学ぶ意義は大きいという状況です。
そこで当会は、欧州諸国での野鳥と風力発電のセンシティビティマップ作成の先進事例と、一部地域で取り組みが始まった国内でのマップ作りの事例を紹介し、今後、日本でどのようにセンシティビティマップ作りを進めていくべきかを議論するため、2018年2月17日(土)に横浜市内で「国際シンポジウム・野鳥と風力発電のセンシティビティマップ~その作成と活用方法」を開催しました。本資料集は、その内容を報告するものです。本書により政府、風力発電事業者、自然保護団体、その他関係機関が野鳥と風力発電のセンシティビティマップについてさらに注目し、日本全国でマップが作られるようになることを願っています。
パネリスト:トリストラム・アリンソン、ウーナ・ダガン、イリーナ・マテーバ、有山義昭、市川大悟、風間健太郎、浦達也、分山達也
コーディネーター:北村亘