ひばりは どこに?
~見かけなくなった、春の風物詩~
イラスト/東郷なりさ
写真/中野泰敬
見かけなくなった春の風物詩
のどかな田園で陽気なさえずりを響かせ、空高く舞い上がっていくヒバリ――。
かつては春の風物詩として、だれもが知っている身近な野鳥でした。
しかし近年、都市部などではその姿を見かけなくなりました。
丈の低い草地を好むヒバリは、開けた原っぱや麦畑などに生息していますが、土地の開発や農業の衰退などによって草地環境が消失・荒廃し、近年ではヒバリやセッカ、ウズラといった草地性の野鳥も減少しているのです。
ヒバリってどんな鳥?
イラスト/白石佳子
体長17cm。淡黄褐色で頭・体の上面・翼・胸には黒い縦斑があり、耳羽は赤褐色。雌雄同色ですが、メスは後頭の短い冠羽をあまり立てません。留鳥または漂鳥。
ユーラシア大陸、アフリカ大陸の北部、イギリスなど広範囲にわたって生息し、世界各地の古い詩や物語などにも数多く登場しています。世界的にも減少傾向にありますが、近年、EUではヒバリなどの農耕地に生息する生きものに配慮をした農業に方向転換しつつあります。
地表に巣をつくり、子育てするため、イタチやネコなどの肉食の哺乳類、ヘビやカラスなどが主な天敵となります。春になると繁殖期を迎えたオスは、メスを呼ぶために切り株にとまったり、舞い上がりホバリング(停空飛翔)したりしながら「フィチフィチフィチ / ピージョルピー チョフチョフチョフ/ピー ジ
ュルジュル…」とさえずり、長いときには20分間もさえずり続けるといわれています。
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ヒバリはなぜ減っているの?
イラスト/白石佳子
昭和の前半までは、東京都などの都市圏でも大きな原っぱや小さな丘などの緑地があちこちに残っていましたが、高度経済成長期(昭和29年~)になると開発ラッシュにより、そういったヒバリの生息に適した場所に、大規模な集合住宅や商業施設が次々に建設されていきました。
そのため、草地面積は、1960年(昭和35年)代からの20年間で3分の1にまで減少しました。1990年代になると、東京でも武蔵野を中心とした地域でしか、ヒバリの繁殖が見られなくなり、現在では、ヒバリは東京都版レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
バードメイト「ヒバリ」
サイズ:約2×3cm
バードメイトは、自然保護に楽しく参加していただく寄付のしくみとして1996年から始まりました。毎年野鳥のキャラクターを決めて、一口1,000円のご寄付につき1個オリジナルピンバッジをお届けしています。
2014年度に小冊子と合わせてヒバリについて広く普及していくために、バードメイトも「ヒバリ」をモチーフにしました。デザインは、ほのぼのとした世界観で人気のフリーイラストレーター・白石佳子さんです。
バードメイトによる寄付金は、野鳥たちが安心してくらせる環境を守る活動に使われます。
「ヒバリ・バードメイト」
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わたしの町のヒバリ情報(2014年~2016年)
ヒバリとヒバリをとりまく環境の情報を広く集めるために、2014年からインターネットとヒバリの小冊子を通じて、アンケート形式の情報収集を行ってきました。ご協力頂いた皆さまありがとうございました。全国から165件の「私の町のヒバリ情報」が寄せられました。集計結果について報告します。
※「私の町のヒバリ情報」について、インターネットからの募集は終了しました。
(1)あなたはヒバリを見たことはありますか?
Q1-1 ヒバリを見たことありますか?
Q1-2 ここ10年でヒバリを見ていますか?
(2)ヒバリの鳴き声を聞いたことはある?
Q2-1 ヒバリの鳴き声を聞いたことはありますか?
Q2-2 ここ10年でヒバリの鳴き声を聞いたことはありますか?
(3)この春あなたの町でヒバリを見た?
Q3-1 この春、あなたの住んでいる町でヒバリを見ましたか?
Q3-2 ヒバリを見た場所は、どのようなところでしょうか?
- 「ヒバリを見たことはありますか?」また「鳴き声を聞いたことがありますか?」の設問に対しては、どちらも約90%の方が見たことがある、聞いたことがあると回答しています。しかし、ここ10年でみると共に84%に減少していました。また「この春、あなたの町」でヒバリを見ることが出来たか?」と限定すると、72%とさらに減少をしていました。
- この結果からみると、約9割の方がヒバリを確認しており、身近な野鳥ではあるものの、近年ではヒバリが減少している地域が増えてきていることが示唆されました。参加者から寄せられた声も合わせてみていくと、田園地帯が残っているような地域では、ヒバリの減少は感じていないという声も多く寄せられる一方、特に関東の都市部の方からは、宅地が増えて、草地や麦畑などヒバリの生息適地が少なくなっているという声も多く寄せられました。身近な野鳥の代表的な一種・ヒバリが地域によっては、環境の変化により減少していっているようです。
- 「ヒバリがいつのまにかいなくなったー」そうならないように、ヒバリやツバメなどの身近な野鳥や多様な生き物がくらせる環境を守る活動に取り組んでいきます。これからも皆様のご協力よろしくお願いいたします。
(4)<参考>ヒバリ情報参加者から寄せられた声
<減っていない情報>
- ぼくのまち、北海道厚沢部町鶉ではヒバリがないていますよ。毎日ヒバリのこえをきくのがたのしみです(北海道檜山郡・男性)
- 自宅から15分程の所にある、開発地の放棄地で3~4番以上が繁殖している模様です。そこでは、他にセッカ、オオヨシキリ、コチドリの姿や鳴き声をよく聞きます(福岡県福岡市東区・男性)
- 家の近所でもよく声をききますし、カヤネズミの観察のために定期的に訪れている平城宮跡(奈良)にも多いので、減っているとは知りませんでした。平城宮跡では、カセネズミの巣をよく「見かけない場所」=低茎草地でヒバリを多く見ることができるようです(兵庫県川辺郡・女性)。
- 幸い我家は一部、森が残っている所に隣接していて、ヒバリやウグイスの鳴き声を聞くことが多いです。彼らとの環境共生を切に願っています(福岡県北九州市八幡東区・男性)。
- 所沢市の三ヶ島公民館のそばの畑には、ほとんどいつもヒバリがいます。私は月に2、3回通ります。先日はすぐ足許にいたのでドッキリしました(きっとヒバリも)三ヶ島のひまわり幼稚園のあたりでは全く見かけません(埼玉県所沢市・女性)
- 青梅市今寺天皇塚の田んぼで3/18、姿確認、以后、毎日、姿を見ることが出来ました。運がよければ口いっぱい虫をくわえた親鳥にも会うことが出来ました。多い時は4羽、同時に見ることもあります(東京都青梅市・女性)。
- 年々減少しているヒバリ、ツバメは現在住んでいる私の所は田園地帯なのであまり感じられないですね(茨城県つくばみらい市・女性)。
- 4月20日すぎから、ヒバリの姿とさえずりが聞こえます。毎年同じ様子です。そして、10月の末まで、姿を見ることができ、たくさんいるようです。人工の少ない地ですので、自然が残っており、その他の鳥も、種類が多いです(北海道沙流郡・女性)。
- 屋上緑化されている世田谷の団地マンションでヒバリの繁殖を確認(東京都世田谷区・男性)
<ヒバリの減少について>
- 身近かだった空地、田、畑が、開発住宅地になりヒバリだけじゃなく環境が変わっています(岩手県紫波郡・男性(神奈川県海老名市・男性)
- 毎春雄物川の河川敷でみかけますが、今年は鳴き声が少なく数が減ったのかな?と思っています
- 周辺でも麦畑が少なくなり「ヒバリの鳴声が以前程聞かれなくなりました。幸い住居が小貝川に近いため河川敷や土手に行くと鳴声を聞くことが出来ます(茨城県龍ヶ崎市・男性)。
- 30年、自宅近辺の身近な鳥を中心に観察しています。本当にヒバリが少なくなりました。ずっと以前新聞に出た会の広告で、「ボーナスが半分になったら困りますか、ヒバリは半分になった」というフレーズが強く印象に残っています(神奈川県座間市・男性)。
- 小生の住居付近でヒバリを見たのは7~8年前が最後だと思います。空地の草原が住宅地化されたため、見かけなくなったと思います(神奈川県川崎市麻生区・男性)
- 近くに荒川河口の河川敷があり、10年前までは揚ヒバリの声をよく耳にしました。何故聴くことが出来なくなったか疑問でしたが、小冊子の内容から把握できました(東京都江東区・女性)。
- 子供の頃(調布市多摩川)家の隣のムギ畑でヒバリをよく見ました。鳴き声もきれいです。やはり開発でいなくなったと思います。自然公園など生息環境を作れないものでしょうかね(東京都江東区・女性)。
- 今住んでいる場所も昭和42年当時はひばりが鳴き乍ら舞い上り、そして下りてくる姿が見られたものです。
- むかしはヒバリがとんでいました。最近はみた事ないです(北海道登別市・男性)。
- 去年の春から1度も見ていないので心配です(神奈川県相模原市・女性)。
<その他>
- ヒバリがそんなに見かけなくなった鳥だとは思いませんでした。春、畑で仕事をしていると頭上でさえずる声にのどかさを感じ、原発事故で避難せざるを得ない地域がすぐそこにある不自然な状況に胸を痛めております。今、除染作業で木々を切り、草を刈り、大地を削っています。今後もヒバリは生きてゆけるでしょうか(福島県南相馬市原町区・女性)。
ヒバリなど身近な野鳥を守る活動にご支援ください
「ヒバリ・バードメイト」
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