公益財団法人 日本野鳥の会

ツバメを取り巻く放射性物質の状況

自然保護室

チェルノブイリ原発事故では、放射性物質の影響により、ツバメに部分白化や尾羽の異常が生じたことが報告されました(MØller & Mousseau, 2006)。福島第一原発の事故でも同様のことが懸念されるため、当会では異常のあるツバメの情報を集めています。

「ツバメ全国調査2012」から

 2012年5月より集めはじめた、異常の見られるツバメに関しての情報は、10月末までに1,534件の有効な情報が得られました。全国平均で部分白化は5.7%、尾羽の不均一個体は3.1%の発生率で見られました。そのうち福島県内(176件)では、部分白化0.6%、尾羽の不均一個体0%、隣接する宮城県内(31件)では、部分白化6.5%、尾羽の不均一個体3.2%で、いずれも全国平均と比べて高い傾向はありませんでした(図)


尾が不均一な宮城県角田市のツバメ

写真1 駅舎で繁殖するツバメ(角田市)
写真2 不均一なツバメの尾羽(角田市)
写真3 部分白化(のどのオレンジ部分参照)したツバメ(福島県南相馬市) 写真提供/群像舎

 2012年7月には宮城県の会員から「尾羽の不均一なツバメが複数いる」との情報が寄せられ、角田市を訪ねました。角田市は、福島と宮城のほぼ県境で、原発から約60㎞に位置します。
 尾羽の不均一なツバメが見つかったという駅舎には、30巣ほどのツバメの巣を確認できました(写真1)。子育てのピーク時となる6月には、7羽の該当個体が観察されたとのことです。観察中ほどなく巣に戻ってきた親鳥は、確かに片方の尾羽が短く不均一でした(写真2)。
 巣の近くの空間線量を測ったところ、約0.1マイクロシーベルト/hでさほど高くありませんでした。このような個体は少し離れた別の場所でも見られ、わずかな滞在のあいだに2羽を確認しました。念のため、使い終わった古巣5巣を持ち帰り、汚染の有無を調べたところ、そのうちの2巣はそれぞれ7,200、6,700ベクレル/kgと比較的線量が高く、平均で4,050ベクレル/kgでした。
 ツバメは、個体同士の争いや栄養不良などによって尾羽が抜けたりすることがあるため、放射性物質が原因とは特定できませんが、この事例のほかにも、福島県内では部分白化のツバメが昨年の繁殖期に観察されており(写真3)、今後の経過を見ていく必要があります。
 今回の原発事故のような、低線量で長期にわたる放射性物質の野生生物への被曝影響は世界的にも情報がほとんどなく、今後も継続してモニタリングしていかなければなりません。当会ではツバメを対象に、汚染地域と非汚染地域でのヒナ数の比較や部分白化の有無などを調べていく予定です。部分白化や尾羽の異常個体を見かけた際は、情報をお寄せください


環境省のモニタリング調査から

表 警戒区域内のツバメの巣の線量出典:平成24年度野生動植物への放射線影響に関する意見交換会要旨集(環境省)

 環境省では事故直後から、原発周辺環境への影響を把握するため、野生動植物の試料の採取、分析、評価を行なっており、ツバメの巣もその対象になっています。
 2012年9月に警戒区域内で採取された巣からは、数値にばらつきがあるものの、浪江町で最大138万ベクレル/kg、大熊町で最大100万ベクレル/kgもの放射性セシウムが確認されました(表)。放射性物質の影響を受けやすい卵やヒナの時期に高い線量にさらされると、個体にも影響を及ぼすおそれがあります。一方、こうした警戒区域内は現在無人となっていることから、ツバメの巣がカラス類により襲われ、数が減っていることも指摘されています。汚染状況の継続的なモニタリングとともに、ツバメの個体数の推移にも注視が必要です。

※環境省では、一般廃棄物最終処分場に埋立処分できる基準値を8千ベクレル/kgと定めている


ツバメの巣を落とさないで

 放射性物質の飛散予測で汚染が高かったとされる一部の地域では、濃度の高い巣がある可能性もありますが、全国の巣が汚染されているということではありません。巣から50㎝以上離れれば、自然放射線量のレベルまで下がり人体への影響は無視できるものと考えられますので、ツバメの巣を落としたりすることのないようお願いします。

ツバメへの放射性物質の影響調査にご協力をお願いします

チェルノブイリ原発事故では放射性物質により、ツバメに部分白化や尾羽の異常が生じたことが報告されています。福島第一原発事故でも同様のことが懸念されるため、当会では昨年5月から、異常のあるツバメの情報を集めました。その結果、10月末までに1,534件の情報が寄せられ、全国平均で部分白化は5.7%、尾羽の異常個体は3.1%でした。福島県内では176件の情報があり、部分白化は0.6%、尾羽の異常は見られませんでした。

当会では今年度も引き続き、ツバメを指標に放射性物質の影響を把握するために、ツバメの部分白化の情報を集めます。今年は、昨年福島県南相馬市において、写真のようにツバメののどに白斑のある個体が観察されたことから、特にこのような,のどの部分的な白化に着目して情報を集めます。
ツバメを日頃から観察をされている方で、巣を観察して、子育てをしている親鳥を対象に、のどの一部が白かった、または無かったかの情報を、ぜひお寄せ下さい。

(1)観察された日:
(2)観察された場所:※できる限り番地までご記入ください
(3)観察された方のお名前:
(4)喉の部分白化:(有り・無し・分からない)
(5)写真:(Eメールに添付または郵送でお送り下さい)
(6)備考・気が付いたこと

※部分白化がないという情報も大切ですので、観察された結果、「部分白化なし」という情報もお寄せ下さい。

<送付先>
日本野鳥の会 自然保護室 担当:山本
〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
TEL 03-5436-2633
Eメール:[email protected]
なお、汚染地域のある飯舘村、浪江町、南相馬市の調査は当会職員が行なう予定で準備を進めています。

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