公益財団法人 日本野鳥の会

ツバメ全国調査2012 結果報告

(2012年11月)

(公財)日本野鳥の会は、近年減少傾向にあるといわれているツバメの現状を明らかにし、その背景にどのような原因があるのか把握することを目的に、2012年のバードウィーク(5月10日~16日)を機に広く全国にツバメの目撃情報の協力を呼びかけました。その結果、全国から合計8,402件の情報が寄せられ、ツバメの現状について次のことが分かりました。

1.ツバメ調査の方法

(1)調査方法

この調査は、ツバメの置かれている状況を、インターネットや配布したツバメ小冊子等を通じて情報を集めました。

広く一般に参加を呼びかける「わたしの町のツバメ情報(一般目撃調査)」と、主に当会会員から情報提供をいただく「ツバメの営巣環境調査(詳細調査)」に分かれています。「わたしの町のツバメ情報」はどなたでも参加できる調査で、ツバメの目撃や営巣、周辺の環境について情報を募るアンケート形式の調査となっています。「ツバメの営巣環境調査」では、ツバメの営巣状況の把握と併せて、放射性物質がツバメに影響を与えているかどうかを調べました。

※調査項目については、調査用フォームを参照のこと(わたしの町のツバメ情報・ツバメの営巣環境調査)

(2)全国から寄せられたツバメ情報について

全国から8,402 件の情報が寄せられました。この情報を元に集計を行なうとともに、郵便番号レベルで位置の特定できた回答6,787件(一般目撃調査)と1,535件(詳細調査)について地図化を行ないました(図1)。今回47都道府県すべてから情報が寄せられましたが、特に東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の首都圏からの回答が多く得られました。

2.調査結果

(1)ツバメの分布域について

全国から寄せられた「わたしの町のツバメ情報(一般目撃調査)」の回答者のうち99%がツバメを確認し、86%が営巣を確認していました(図2)。また今回、ツバメの生息が確認された地点と鳥類繁殖分布調査(環境省 2004)の結果を重ね合わせ比較したところ、ほぼ同様の分布であり、特にツバメの分布が縮小している傾向は認められませんでした(図3)。ツバメは、本来の生息地である里地里山の他、都市部などでも広く見られていることが分かりました。

(2)ツバメの生息数について

繁殖期の分布は大きな変化は見られませんでしたが、「最近(10年間)ツバメは増えた? 減った?」の設問に対しては、回答者のうち39%が、ここ10年間でツバメが少なくなってきていると感じていることが明らかになりました(図4)。ツバメの分布域は大きくは変わらないものの、個体数は多くの地域で減少している可能性が示唆されました。

(3)ツバメの減少要因について

ツバメ減少の要因について、自由表記で回答のあった情報を集計すると、カラスによる影響が296件、またフンで汚れるなどの理由から巣が人の手で壊されている事例が216件と上位に挙がってきました(表2)。これを地図に示してみると、この2つの要因は都市近郊で多く見られました(図5、6)。

(4)<参考>ツバメ調査参加者から寄せられた声

ツバメの減少について

その他

(5)経過報告:放射性物質の影響調査

チェルノブイリ原発事故では、ツバメに部分白化や尾羽の異常が生じたことが報告されているため、当会では主に支部会員に呼びかけ、情報を集めました。その結果、ツバメの部分白化については全国平均で5.7%、尾羽の異常は3.1%の割合で発生していました。一方、福島では、部分白化の発生率が0.6%、尾羽の異常が0%。隣接する宮城県でも部分白化の発生率が6.5%、尾羽の異常が3.2%で有意に高くなる傾向は初年度の調査では、特には見られませんでした。

しかし、2012年7月に、宮城県内で尾羽に異常のあるツバメが複数いるとの報告が寄せられ、巣立ち後の巣を持ち帰り汚染の有無を調べたところ、5巣中2巣から、それぞれ7,200、6,700ベクレル/kgと比較的高濃度の放射性物質が検出されました。今後ツバメの被曝の有無や繁殖率などについても地域を絞って継続的な調査をする必要があると考えています。

※ツバメへの放射性物質の影響について

2012年3月23日には、環境省自然環境計画課により、福島第一原子力発電所から約3キロ離れた福島県大熊町で採取したツバメの巣から、1キログラム当たり約140万ベクレルの放射性セシウム(セシウム134と137の合計)が検出されたことが発表されました※1。

1986年に発生したチェルノブイリ原発事故では、放射性物質の影響により、ツバメに部分白化や尾羽の不均一な個体が生じたことや、放射線量の多い地域では雛の数が少ない等の現象が報告されています※2。

※1出典:環境省自然環境計画課調査結果/3月23日発表による
※2出典:Moller, A. P. & Mousseau, T. A. 2006 Biological consequences of Chernobyl: 20 years after the disaster. Trends Ecol. Evol. 21, 200-207.

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