公益財団法人 日本野鳥の会

ツバメの子育て状況調査2013 結果報告

(2014年4月)

消えかけている人とツバメのつながり

日本人にとって身近で親しみあるツバメ。しかし、2012年に当会が実施したアンケート調査では、全国的な分布に大きな変化はなかったものの、約4割の人が「ツバメが減っている」と感じていました。また「不衛生」を理由に、人の手によって巣が壊される例が寄せられるなど、ツバメの子育てが難しくなっている状況がわかってきました。

都市化が進むほど、ツバメの巣立ち数は減少

そこで、2013年には「ツバメの子育て状況調査」を実施。約1400件の情報を分析した結果、都市部で巣立つヒナの数は、郊外に比べて少ないことがわかりました。また都市部のツバメは、わずかな緑地を支えに、厳しい環境で子育てを強いられていることが見えてきました。

大都市では多くのヒナを育てられない

全国から寄せられた1,437巣の観察情報のうち、巣立ちヒナ数と都市化との関係を見たところ、都市では巣立ちヒナが少ないことがわかりました(図1)。

特に首都圏を見ると、都心と郊外の比較では、1巣あたり約1羽分も少なくなっていました(図2)。都市部では、子育てできる環境が少なくなる上、巣立つことのできるヒナ数も少なく、ツバメにとっては非常に厳しい環境であることが改めて浮き彫りになりました。


子育て失敗要因は「巣の落下」がもっとも多い

※巣の落下がもっとも多く、この中には建物の構造に起因するもの、人やカラスに落とされたものも含まれると推測されます。
※全国から集まった175例の繁殖失敗要因のデータを使用。

都市のツバメにとって、緑地は「子育ての命綱」

都心部でヒナの数が少ないのは、本来エサを捕るのに適した田畑が少なく、エサの量が不足していることが考えられます。都心部のツバメでは、公園などの林縁で風にのって昆虫を捕えている姿が見られます。そこで、都心部の巣立ちヒナ数と巣の周辺環境との関係を見てみると、点在する緑地がプラスに働いていることがわかりました。ツバメは森林の鳥ではありませんが、エサ条件の厳しい都市では、小さくても緑地の存在がツバメの子育てを助けていることが見えてきました。

ツバメの子育てを見守る町を増やし、身近な自然を守る

2012年、2013年と調査を重ねた結果、ツバメが減少傾向にあること、都市部では厳しい環境での子育てを強いられていることが見えてきました。今後は、農村部をはじめ地方でもツバメが減っているのか、子育て情報などをさらに集め、全国的なツバメの現状を明らかにしたいと考えています。ツバメに必要なのは、身近な自然と子育てを見守る人の優しい心です。ツバメが安心して子育てできる町を増やせるよう、全国調査をまとめ、ツバメを見守る方法を発信して、人とツバメが共存できる社会をめざしていきます。

(イラスト:向田智也)

地方からの情報提供にご協力を!

2013年に集まったデータは、東京都、神奈川県など首都圏をはじめとした大都市圏から多く寄せられており、大都市でのツバメの子育て状況は見えてきました。しかし、地方都市や農村部など里地里山が多く残る地域からの情報が少なく、ツバメ本来の生息環境での子育て状況は分析できていません。ぜひ地方からの情報をお寄せいただき、地方を含めた全国の子育て状況を明らかにできればと考えています。全国に会員や支援者の方がいることが、当会の強みの一つです。おひとり一つの巣の情報をお送りいただければ、大変貴重な情報となります。インターネットにアクセスできる環境があれば簡単に参加いただける調査ですので、ぜひご協力をお願いいたします。

参加方法

特設ウェブサイト「ツバメの子育て状況調査」にアクセスいただき、メールアドレスとニックネーム、観察している巣を登録します。あとは子育ての様子を観察し、最後に何羽の巣立ちに成功したか、失敗の場合はその原因などの情報を書き込んでいただきます。スマートフォンにも対応しています。


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