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本講演では、2019年3月にPelagic Publishingから出版された「Wildlife & Wind Farms: conflicts and solutions(Vol. 3)」の内容に基づき、主にヨーロッパ北西部で得られた知見から、洋上風力発電施設の建設が鳥類をはじめ哺乳類、魚類、底生生物などの海洋生物に与える影響について概説します。
例えば、鳥類については、バードストライクが発生することがあるのはよく知られている一方、モノパイル式の施設の建設時の杭打ち作業で発生する海中・空中への騒音により鳥類などの海洋生物が生息地を放棄することは、モノパイル式の施設がない日本ではほとんど知られていないのではないでしょうか。
本講演は、2019年3月にPelagic Publishingから出版された「Wildlife & Wind Farms: conflicts and solutions(Vol. 3)」の内容を概説するもので、底生生物、魚類、哺乳類、鳥類などの海洋生物に対する洋上風力発電施設の既知および潜在的な影響をすべてまとめたものです。
鳥類については、バードストライクや生息地放棄などの直接的な影響の発生はよく知られている一方、物理的および海洋力学的な影響や鳥類以外の動物の生息分布の変化といった間接的な影響の発生は断片的にしか知られていません。それらの影響について知られている情報のほとんどはイギリスやドイツなどヨーロッパ北西部で得られた知見に基づいているため、日本など世界の他の海域で起きる洋上風車に対する海洋生物の反応や影響は、残念ながら推測に過ぎません。
一般的に、洋上風車の建設は、生物学的生産性に密接に関係する重要な場所で湧昇流を潜在的に発生させる伴流効果を伴い、地域の沿岸生態系に影響を与えます。洋上風車の建設中は、杭打ち作業による騒音が海中にも空中にも発生し、それに対し敏感な魚類、海棲哺乳類、一部の鳥類が他の海域に移動(生息地放棄)する可能性があります。あるケースでは、これにより繁殖中の海鳥の餌となる魚類が長期的に減少しました。風車の基礎構造の存在が魚類を誘引・蝟集する「漁礁効果」を生み、それによって海棲哺乳類やウ類などの鳥類を洋上風車の周囲に誘引します。しかし、鳥種により異なるものの、海鳥の広範囲にわたる移動は典型的な行動であることが多いです。
このような生息地の喪失による鳥類への影響は通常、すべてが実測されるよりも、一部の実測値からモデル化されることで把握されます。洋上風車によるバードストライクはほとんど記録されていませんが、それは洋上での鳥類の死骸回収が技術的に困難であることが一因です。
また、複数の施設により影響が生じる累積的影響については、検討が始まったばかりです。そのため、さらなる研究によってこれらの知識のギャップが解消されるまでは、慎重な空間計画やゾーニングによってバードストライクなどの影響の発生を回避し、予測される影響をより幅の広い保全策を講じることで、影響の不確実性を受け入れながら洋上風力発電の導入を進めるべきです。これらのステップは、風力発電事業と海洋生物のWin-Winシナリオという究極の目標を達成するための鍵となると考えます。
Martin Perrow 博士(Ecological Consultancy Ltd. イギリス)
2021年7月30日(金)17:30~19:00(終了予定)(入室17:00~)
オンライン会議システム「Zoom」と同時通訳アプリ「interprefy」を使用
※参加者には別途「Zoom」入室アドレスと、「interprefy」のインストールアドレス等を合わせてお知らせします。
無料
90名(先着順)
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お申込みいただいた方に、URL等の詳細をメールにてお知らせします。
(公財)日本野鳥の会
プロ・ナトゥーラ・ファンド
Martin Perrow 博士(Ecological Consultancy Ltd. イギリス)
演者は生態学的調査の専門コンサルティングECON 社のディレクターを30年以上務め、英国で洋上風力発電の導入が始まって以来19年間、13の洋上ウィンドファームおよび海域で環境影響評価や生物モニタリングを行っており、洋上風車と野生生物の相互関係を研究してきました。
その中には、10年以上前に初めて鳥類のある種が洋上ウィンドファームを利用していることをバイオテレメトリー調査によって明らかにした研究、目視観察により洋上ウィンドファーム内での鳥類の回避行動を詳細に調べた研究など、海鳥に関する革新的な研究がいくつも含まれています。
また、2019年に「Wildlife and Wind Farms, conflicts and solutions」というシリーズ本4巻を完成させるなど、約130本の科学論文や報告書、図書等を執筆しています。これらのように演者は、自然保護の未来のために努力しています。