公益財団法人 日本野鳥の会

プレスリリース 2007.04.13

カワウの狩猟鳥獣化に反対する意見を環境省に送りました

 3月22日に環境省から公表された狩猟鳥獣の種類や規制に関する鳥獣保護法の施行規則の改正案への意見(パブリックコメント)募集に対し、(財)日本野鳥の会は下記のような意見書を送りました。

 今回、環境省から公表されている施行規則改正案は

(1)カワウを狩猟鳥獣に追加する
(2)ウズラを、狩猟鳥獣の指定を解除せずに、全国で5年間、禁猟にする
(3)ニホンジカのメスの捕獲禁止を解除する(狩猟できるようにする)
(4)ヤマドリ・キジのメスや島嶼のヒヨドリ等、今まで行ってきた部分的な捕獲禁止措置を継続する

の4点からなっています。(詳しくはhttp://www.env.go.jp/press/press.php?serial=8179

(財)日本野鳥の会はこのうち、

(1)カワウの狩猟鳥獣化には反対
(2)ウズラの捕獲禁止措置については賛成

の意見を表明しました。

 狩猟鳥獣の種類については、1994年以来、実質的な変更がありませんでしたが(2002年に表記方法を変更)、昨年の中央環境審議会の答申(平成18年2月「鳥獣の保護及び狩猟の適正化につき講ずべき措置について」)や法改正時の国会での議論、第10次鳥獣保護事業計画のための基本指針(平成19年1月告示「鳥獣の保護を図るための事業を実施するための基本的な指針」)を受けて、基本指針改定に合わせて5年毎に狩猟鳥獣を科学的見地から見直す、ということが決まっています。このためにこの3月に発足した「狩猟鳥獣種の見直し等検討調査に係る検討会」の第1回(3月18日(日)に開催)で、上記の(1)~(3)に関する討議が1回だけ行われ、3月22日にこの施行規則改正案が公表されてパブリックコメント募集がはじまりました。
今回の改正案のうち、特に(1)のカワウの狩猟鳥獣化は非常に問題の多いものです。3月18日の検討会には7人の専門家が出席していましたが、カワウの狩猟鳥獣化については発言した5人の委員は全員が反対意見を述べています。そうした検討会での議論を踏まえずに、しかも検討会のわずか4日後に性急に改正案が出されている点で、環境省の検討姿勢は非常に疑問です。
またその理由立ても非常に疑問の多いものです。環境省はカワウを狩猟鳥獣に追加する理由を、次のとおりとしています。
「近年、著しくその数が増加したことにより、農林水産業や生態系等の被害の発生要因となっているカワウについて、鳥獣の保護を図るための事業を行うための基本的な指針(平成19年1月24日告示)で示している次の狩猟鳥獣の選定の考え方に合致していることから、狩猟鳥獣に追加する。

  • 生息状況が拡大し、農林水産業に係る被害が相当程度認められること
  • 狩猟での被害対策を目的とした捕獲等による個体数の抑制が期待できること
  • 繁殖力があり捕獲等がその生息の状況に著しい影響を及ぼすおそれのないこと」
    (「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律施行規則の一部を改正する省令案(概要)」より)

しかしこれらの理由は、カワウの河川・湖沼における漁業への被害対策という点から見ても、以下のような矛盾をはらんでいます。
カワウは1970年に全国で約3000羽という危機的な個体数に落ち込んでいますが、その後、個体数を回復してきており、現在では(2000年時点)、5~6万羽という推定値のレベルまで増えてきています(福田ら 2002)。これに伴って、全国の河川で漁業被害(主にアユへの食害)の声が高まってきているのも事実です。しかし、果たしてカワウを狩猟鳥獣に加えることでこうした漁業被害は収まるのでしょうか。同じようにカワウの個体数の回復と河川の魚類への被害が報告されているヨーロッパでも、捕殺により個体数を減少させて被害を減らそうとする試みが行われています。しかしそのほとんどが個体数をほどよく管理することに失敗しており、コンピューターによるシミュレーションでも、個体数管理が非常に困難であるという結果が出ています(「特定鳥獣保護管理計画技術マニュアル(カワウ編)」118-119ページ)。「狩猟による個体数管理」が可能かどうかはまだ議論の最中なのです。
カワウは河川や湖沼の様々な場所で魚を捕食しますが、狩猟が可能な場(可猟区)というのは限られています。関東地方のように都市河川の多い地域では河川で狩猟ができる区域は半分強にすぎないというデータもあり(関東カワウ広域協議会の検討資料)、仮にハンターが熱心にカワウを撃ち殺したとして、それに追われたカワウが狩猟を禁じられた区間に逃げ込むだけのことで、とても河川全体の漁業資源の保護という目的を達することができるとは思えません。
またカワウの魚の捕食が「被害」として最も問題になるのは、アユが河川を遡上する3~5月ですが、この時期は狩猟期は終了しています(本州以南では2月15日まで)。有害鳥獣捕獲で銃を使った場合にカワウがその場所に一定期間よりつかなくなることはある程度経験的には知られています。しかしこの効果は確実なものではなく、当会の行った調査では、その効果ははっきりしませんでした。また、内水面漁連自身の行った効果検証調査でも、アユの産卵場所において銃器による捕獲を行ったが、直後から再度飛来したという記録もあります(平成18年度第1回神奈川県カワウ被害防除対策協議会報告資料)。銃器による捕獲が2~3ヶ月の効果が見込めるというのは、科学的に実証された事実かどうか非常に疑問です。
このような点を踏まえて、当会はカワウの狩猟鳥獣化について反対をしています。

なおこのパブリックコメント提出の〆切は、4月20日(金)となっています。

参考

[件名]鳥獣法施行規則改正案に関する意見
[宛先]環境省自然環境局野生生物課
[氏名](財)日本野鳥の会 (会長 柳生博)
[郵便番号・住所] 〒151-0061 東京都渋谷区初台1-47-1
[電話番号] 03-5358-3513(代表) 042-593-6872(自然保護室)
[FAX番号] 03-5358-3608(代表)042-593-6873(自然保護室)
[意見]

意見1

1 省令案のどの部分への意見か

1ページ:「1.狩猟鳥獣の見直し(鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律施行規則(以下「規則」という。)第3条)
(改正内容)
近年、著しくその数が増加したことにより、農林水産業や生態系等の被害の発生要因となっているカワウについて、鳥獣の保護を図るための事業を行うための基本的な指針(平成19年1月24日告示)で示している次の狩猟鳥獣の選定の考え方に合致していることから、狩猟鳥獣に追加する。

2 意見の要約

 カワウの狩猟鳥獣化については、反対する。

3 意見及び理由
引用文献

意見2

1 省令案のどの部分への意見か

「2.対象狩猟鳥獣の禁止・制限の見直し(規則第10条第1項)
(1)ウズラの捕獲等の禁止
環境省が実施した自然環境保全基礎調査等により全国的に生息分布の減少が指摘されているウズラについて、生息分布の減少の主な要因と考えられる生息環境の悪化に加え、狩猟の継続がウズラの生息状況に与える影響も否定できないことから、全国の区域において、5年間の捕獲等の禁止とする。」

2 意見の要約

ウズラの捕獲禁止措置については賛成する。

3 意見及び理由(可能であれば、根拠となる出典等を添付又は併記。)

印刷される方はこちらをご利用ください
PDF カワウの狩猟鳥獣化に反対する意見に関するプレスリリース

自然保護活動のご支援を お願いします!
  • 入会
  • 寄付