2010年11月25日
シマフクロウのための野鳥保護区は8箇所に
根室地域で、合計184.3ヘクタールの森林を保全
(財)日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博 会員・サポーター数:約5万人)は、東芳枝氏(ひがしよしえ・故人)からのご寄付および当会の野鳥保護区基金への寄付金を元に、根室地域のシマフクロウ生息地37.8haの山林を購入した。それぞれ「東野鳥保護区シマフクロウ根室第4」「野鳥保護区シマフクロウ根室第5」とし、恒久的に保全する。
国内に生息するシマフクロウの総つがい数は僅か40つがいであり、絶滅の危機に瀕している。また、生息つがい数の4割は民有林等で法的な保護指定の無い場所に生息していることから、森林伐採による生息環境の悪化などの恐れがある。このため当会では、シマフクロウを保護するため、寄付を財源として土地を購入すること、また土地所有者との協定を締結することにより、生息地を野鳥保護区として保全する活動を継続している。今回の保護区を含め、当会が野鳥保護のために設置した保護区は合計32箇所、2870.8haになった。
購入地は、根室地域の山林、合計面積37.8ha(378,013㎡)で、その内11.4ha(114,034㎡)を「東野鳥保護区シマフクロウ根室第4」、26.4ha(263,979㎡)を「野鳥保護区シマフクロウ根室第5」として保全を進めていく。この周辺ではシマフクロウ1つがいの繁殖が確認されており、今回の購入地も生息地の一部である。
根室管内の当地域では、約6つがいのシマフクロウが確認されており、多数生息する知床地域に次ぐシマフクロウの重要な生息地になっている。今回の購入地は、周辺の森林で1つがいが継続して繁殖を成功させている重要な森林であったが法的な保護がされていなかったため、今回の保護区の設置に至った。今後も、この地域の森林を対象に野鳥保護区の設置を進める計画である。なお、シマフクロウの保護上、この保護区の位置は公表していない。
野鳥の生息地の保全を目的として、当会では「野鳥保護区」を設置している。これまでに北海道東部を中心に32か所、2870.8haを買い取りや協定により確保してきた。これは東京ディズニーランドが57個入る大きさで、国内の自然保護団体が設置した保護区としては最大級の面積である。この土地の買い取りの財源は、会員をはじめとする方々からの寄付で成り立っている。当会の最初の野鳥保護区は、1987年に根室に設置したタンチョウ営巣地の営巣地7.6haだった。それ以降、タンチョウ営巣地を中心に順次拡大を続け、タンチョウ保護では一定の成果が得られたため、2004年からシマフクロウの生息地の買い取りも開始した。野鳥保護区が集中する北海道東部では釧路地域と根室地域に事務所を置き、当会の専従職員を常駐させ、保護区の巡回監視にあたっている。
シマフクロウは、全長70㎝、翼を広げると約180cmの世界最大級のフクロウ類である。極東地域に狭い分布域をもち、我が国では、北海道および北方領土に生息している。河川および湖沼で魚類やカエルなどを捕食し、広葉樹の大木の樹洞に営巣する。
20世紀初頭までは、北海道全域に分布していたが、森林伐採による営巣木の減少と河川改修によるエサの魚類の減少等により、現在、北海道東部を中心に約40つがい130羽ほどが生息しているに過ぎない。この個体の約半数は知床地域に生息し、残りが日高地域、根室、十勝地域に分散して生息している。知床地域以外では人による、なんらかの手助けにより生息が維持されている状態がほとんどである。中には、釣り人や心ない撮影者などにより、採食や営巣が妨害されている個体や、人間の生活圏に近い場所では交通事故や感電事故に遭って死亡する個体もあり、一層の保護対策が求められている。また、生息地が分断・孤立化していることにより、繁殖地から巣立った若い個体がうまく分散できず、近親交配が起こりやすい状態になっており、生息地間の森林の確保や育成が課題となっている。
<シマフクロウの保護指定状況>
自然と人間が共存する豊かな社会の実現を目指し、野鳥や自然のすばらしさを伝えながら、自然保護を進めている民間団体である。全国5万人の会員・サポーターが、自然を楽しみつつ、自然を守る活動を支えている。
・創設:1934年 ・創設者:中西悟堂 ・支部:全国90支部
日本野鳥の会は、特定公益増進法人に認定されており、個人や法人が支出した寄付金に対して所得控除や損金算入が設定されている。
根室市役所記者クラブ
●本件に関するお問い合わせ
財団法人日本野鳥の会
野鳥保護区事業所
担当:松本 潤慶(まつもと じゅんけい)
〒086-0074 北海道根室市東梅115-1
T E L:0153-25-8911 携帯電話:080-1179-2786
野鳥保護区シマフクロウ根室第4・第5