公益財団法人 日本野鳥の会

プレスリリース 2011.07.10

2011年7月10日

三宅島のサンゴ、今年も良好な状態を確認
~三宅島で8回目のリーフチェックを実施~

主催:三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館
共催:コーラル・ネットワーク
共催:スナッパー・ダイビングセンター

2011年7月9日、三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館とコーラル・ネットワークとスナッパー・ダイビングセンターは共同で、世界共通のサンゴ調査である「リーフチェック」を実施した。実施した場所は三宅島の西側に位置する富賀浜のテーブル状サンゴ群集と、伊ヶ谷のカタン崎のサンゴ群集である。
調査を実施した結果、富賀浜では、調査範囲の50%以上がサンゴに覆われていた。調査範囲の南側で昨年よりサンゴが若干減少していたが、調査範囲の北側にあるテーブル状のサンゴ群集は例年と変わらず良好な状態であった。カタン崎では、調査範囲において帰島後の調査で最高の40%以上がサンゴに覆われ、例年よりも良好な状態であった。
また、富賀浜とカタン崎の両方で部分的に死んだサンゴが見られたので、今後の推移を見守っていく必要があるが、オニヒトデの大発生をすぐに心配する状況ではなかった。

※リーフチェックとは
サンゴ礁の健康度を測るために世界同一基準で用いられているモニタリング調査で1997年に始まった。アメリカ・カリフォルニアに本部を置く民間団体が推進している。調査は科学者とボランティアダイバーでチームを編成し、サンゴ、魚類、海底の生物など国際基準の調査項目を潜水して調査し、調査結果をインターネットを通じて本部に送る。各地の結果は毎年本部で取りまとめられ、ホームページなどを通じて公表される。

1.三宅島でのリーフチェックの経緯と調査方法


調査ライン上のサンゴを記録(富賀浜)

三宅島では1998 年より調査を開始し、以後99 年、05年、06年、08年、09年、10年と7回調査が行われ、今回の調査は8回目となる。
今回はコーラル・ネットワークのリーフチェックコーディネーター1名、スナッパー・ダイビングセンターのインストラクター1 名、東京大学海洋研究会の大学生2名、日本野鳥の会の職員でアカコッコ館のスタッフ3名で、地元の漁船の協力を得て、富賀浜と伊ヶ谷のカタン崎を調査した。
世界共通の調査方法に準じ、サンゴ群集上にメジャーで100mのラインを設置し、ライン上のサンゴの状態を観察した。あわせて、周辺の魚やエビ、ウニなどの決められた生き物の数を記録した。


2.調査結果


富賀浜のテーブル状サンゴ群集

(1)富賀浜
テーブル状のサンゴを中心に、50%以上が造礁サンゴに覆われていた。調査範囲の北側にあるテーブル状のサンゴ群集は例年と変わらず良好な状態を保っていたものの、調査範囲の南側で若干サンゴが減少し、海藻類が増加していた。
部分的に死んでいるサンゴが何箇所かで見られたが、昨年より少なかった。オニヒトデと疑われる食害が1箇所見つかった。しかし、オニヒトデやサンゴ食の巻き貝は今年の調査では確認されなかった。これらのことからオニヒトデがいたとしても数は多くないと考えられる。さらに腫瘍のあるサンゴが1箇所で見つかった。サンゴ周辺の生き物ではチョウチョウウオ類が昨年同様多く確認できた。また、ガンガゼ類が例年と比べて少なかった。



カタン崎の造礁サンゴ群集と調査ライン

(2)カタン崎
テーブル状のサンゴを中心に、帰島後の調査結果の中では最高の40%以上が造礁サンゴに覆われ、良好な状態にあった。カタン崎は三宅島の中でもサンゴの種類は多いと考えられ、サンゴの生育環境としては安定して良好に保たれていると考えられる。サンゴ食の巻貝の仲間やオニヒトデは全く見られなかったが、オニヒトデと疑われる食害が1箇所でみられた。
サンゴ周辺の生き物ではチョウチョウウオ類が昨年同様多く確認できた。また、ガンガゼ類が例年と比べて少なかった。



3.総評(コーラル・ネットワーク リーフチェックコーディネーター 土川 仁氏コメント)

富賀浜の調査範囲の北側にあるテーブル状サンゴ群集は例年通り良好な状態で保たれており、依然として伊豆諸島最大のテーブル状サンゴ群集であると思われる。しかし、調査範囲の南側で若干サンゴが減少しているため、今後もその推移を見守っていく必要がある。カタン崎の造礁サンゴ群集の状態は昨年より良くなっている。これは数年前に見られた泥状の沈殿物が見られなくなっており、サンゴの良好な生息環境として安定してきているためと考えられる。
オニヒトデやサンゴ食の巻き貝は、どちらも調査の範囲でも確認されず一安心であった。ただし、富賀浜とカタン崎でそれぞれ1箇所オニヒトデの食害らしきものを含め、何箇所かでサンゴの部分的な死亡が見られたので、今後の推移を見守っていきたい。

4.参考リンク

「コーラル・ネットワーク」 http://coralnetwork.jp/
「三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館」 http://www.wbsj.org/sanctuary/miyake/

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