2013年5月23日
環境省記者クラブ 御中
日本野鳥の会 秋田県支部
公益財団法人 日本野鳥の会
日本野鳥の会秋田県支部(事務局:秋田県秋田市、支部長:佐藤公生)と公益財団法人日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博、会員・サポーター数約5万人)は5月23日、八郎潟干拓地(秋田県・大潟村)で計画されている「(仮称)大潟村風力発電所新設事業」について、チュウヒやマガンなど絶滅のおそれのある鳥類の生息や渡り経路に影響を与えるとして、事業者であるサミットエナジー(株)に対して、建設計画そのものを見直してもらうための要請書を5月23日に提出しました。また、本件については、環境省に対しても、要請内容を文書で提示いたしました。
八郎潟干拓地の風力発電事業の計画地には、海外で風車への衝突死事例が発生しているチュウヒ(絶滅危惧ⅠB類)が7ペア繁殖し、同じく風車による影響の事例が発生しているマガン(天然記念物、準絶滅危惧種)やヒシクイ(天然記念物、絶滅危惧Ⅱ類)のほか、希少なシジュウカラガン(絶滅危惧ⅠB類・国内確認数400羽)やハクガン(絶滅危惧ⅠB類・国内確認数100羽)などガン類の中継・越冬地となっており、これらの日本最大の生息地となっています。
以上のことから、この場所に大規模風力発電施設を建設すれば、これらの鳥類への繁殖阻害や生息地消失、衝突死のほか、渡り経路の阻害などの悪影響が避けられないと考えられます。そのため、事業者であるサミットエナジー(株)に対して、計画の見直しを要請するものです。
サミットエナジー(株)
日野鳥発第 20 号
平成25年5月23日
サミットエナジー株式会社
代表取締役社長 北村 真一 様
日本野鳥の会秋田県支部
支部長 佐藤 公生
秋田県潟上市天王追分86-15
公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 佐藤仁志
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
「(仮称)大潟村風力発電所新設事業」建設予定地である
大潟村に生息する希少鳥類及びガン類の保全に関する要請
貴社風力事業部が計画されている(仮称)大潟村風力発電所について、対象事業実施の見直しを要請します。
記
大潟村および周辺の八郎潟干拓地は、北陸から関東、東北地方南部で越冬したマガン、ヒシクイなど天然記念物である20数万羽ものガンの渡りの中継地であり、環境省の推薦により「東アジア地域ガンカモ類重要生息地ネットワーク」に登録されています。
また、(公財)日本野鳥の会が世界共通基準に則り選定した「重要野鳥生息地」にも指定されている、我が国有数の水鳥の重要生息地です。
さらに、水路沿いのヨシ原は、絶滅危惧種1B類であるチュウヒの生息地となっており、大潟村はその日本最大の繁殖地であることは、先に提出した環境影響評価方法書への意見書から、すでに貴社はご存知のことと思います。
一方、(公財)日本野鳥の会が発行した野鳥保護資料集第25集によれば、海外では実際にチュウヒが風力発電施設に衝突死し、マガン等のガン類が生息地放棄などの影響を受けている事例が知られています。
このようなことから、八郎潟干拓地のような重要な鳥類の生息地に巨大な風車群が建設されると、鳥の繁殖や移動、越冬に係る行動の妨げとなり、天然記念物や絶滅危惧種がバードストライクに遭う可能性が非常に高くなると考えます。
それはあたかも、航空機が飛び交う空港敷地内に、多数の高層タワーを建設するようなものです。
また、海外での事例のように、バードストライクだけでなく、ガン類やチュウヒが風車群を忌避することによって、生息地や採食地の放棄が起き、それらの生存率が低下する懸念も十分に考えられます。
我国ではかつて、伊豆諸島の鳥島で羽毛採取のための乱獲によりアホウドリを絶滅の危機に追いやり、発電事業のために田沢湖へ玉川から有毒な水を流入させ、固有種のクニマスを死滅させた過ちがあります。
八郎潟干拓地における巨大風車群による風力発電事業は、これらの過去の過ちに匹敵する愚劣な行為と言わざるを得ないと私たちは考えます。
このようなことからも、本事業は、ガン類やチュウヒなど希少鳥類の生息に大きな影響を及ぼす可能性が非常に高く、風力発電施設の建設には不適切な場所であることは明らかであり、事業を引き続き遂行される意向の場合は、対象事業実施区域を八郎潟干拓地以外の場所にするなど、選定位置の見直しを行うべきです。
ついては、貴社が今一度熟慮され、「(仮称)大潟村風力発電所」事業の計画を見直されるよう、強く要請します。
以上