公益財団法人 日本野鳥の会

プレスリリース 2014.02.12

2014年2月12日

 日本野鳥の会もりおか(代表 中村茂)と公益財団法人日本野鳥の会(理事長 佐藤仁志)は、2月12日、盛岡市北部で計画されている「姫神ウィンドパーク事業」(エコ・パワー株式会社)について、イヌワシなどの希少猛禽類の繁殖や採餌行動に影響を与え、渡り鳥の経路についても影響を及ぼす恐れが大きいことから、事業区域や実施位置の見直し、風車の基数、設置位置の見直しを求めるエコ・パワー株式会社に要望書を提出しました。また、環境大臣に対して適切な指導を求める要望書を提出しました。

平成26年2月12日

日本野鳥の会もりおか
支部長 中村茂

公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 佐藤仁志

環境大臣 石原伸晃殿

「姫神ウインドパーク」事業予定地となる盛岡市玉山地区に生息する猛禽類と各種渡り鳥の保全に関する要望書

 平素より日本野鳥の会の環境保全活動に関してご理解とご協力を賜り、深く感謝申し上げております。盛岡市玉山区から岩手町川口地区にまたがる地域に計画されている「姫神ウインドパーク」事業について、稀少鳥類の生息する本地域の自然環境の保全のため、対象事業実施区域および事業内容の抜本的見直しを事業当事者のエコ・パワー株式会社に対して行政指導して頂くよう強く要望いたします。

1. 要望内容

  1. 平成24年9月21日付けで出された環境大臣意見書に沿って事業実施計画の確定に先立ち改めて十分な環境影響評価を実施し、特に動物及び植物に対する環境影響を可能な限り回避するよう、現在の姫神ウインドパーク事業計画を見直すように、エコ・パワー株式会社に対して行政指導をいただくこと。
  2. エコ・パワー株式会社の事業計画の見直し内容を検討いただくにあたり、本地域において絶滅危惧種イヌワシをはじめとする多様な猛禽類が高い頻度で観察されていることに配慮し、それらの採餌活動や生殖活動に影響を及ぼさず、衝突死を起こす恐れの少ない事業案であることをご確認いただくこと。
     特に風力発電装置の設置区域を猛禽類の生息地域や渡り鳥の渡りの経路からできるだけ遠ざける施設配置となっているか、かつ野鳥の衝突死の起こりにくい形状や大きさの風力発電装置を設置することになっているか、などの検討がなされていることを是非ご確認いただきたいこと。
  3. もし、エコ・パワー株式会社における改訂後の事業実施計画においても、上記の第2項目の問題点に改善が見られない場合には、さらなる改善案の検討をエコ・パワー株式会社に強くご指導いただくこと。

2.要望の背景

 岩手県盛岡市北部の玉山地区から岩手町川口地区にかけては山林・牧野・農耕地・河川・湖水等の混在した豊かな自然環境があり、特に本事業の対象実施区域は姫神山南麓の標高900m前後の尾根に位置し、外山早坂高原県立自然公園にも隣接しております。従って、この地域では一年を通して多様な野鳥が観察されます。春から夏にかけてはキビタキ、ノビタキ、ノジコ、オオジシギなどの数多くの夏鳥が繁殖し、春や秋にはこの地区の上空でオオハクチョウ、マガンなどの渡りが見られますし、小型の様々な渡り鳥が春や秋にこの地区を通って渡りを行っていることも知られています。また、この地域はベニマシコ、ツグミなどの冬鳥の重要な越冬地でもあります。さらにこの地域には、モズ、ヤマドリなどの留鳥も数多く生息しており、日本野鳥の会もりおかのこれまでの調査では、合計150種以上の野鳥が確認されております。
 なかでもこの地域で特筆すべきは、数多くの猛禽類が観測されている点です。生態系の頂点に位置する猛禽類の多様性は、その自然環境の豊かさの指標ともいえるものでありますが、この地域ではノスリ、ハイタカ、ハチクマ、クマタカ、ハヤブサ等の様々な猛禽類が観察されております。
 特に私どものこれまでの調査結果によれば、この地域の広範囲な山林牧野は、我が国の天然記念物であるイヌワシの生息地であり、複数のイヌワシが定期的に採餌等の活動を行う重要な場所であることが明らかになっています。イヌワシは、環境省が第4次レッドデータリストの中で「絶滅危惧IB類」と指定している野鳥であり、日本全国でおよそ400羽が生息すると推定されています。しかも自然環境の豊かな岩手県にはそのうちの約20%が確認されて、岩手県内のイヌワシ生息地の保全は日本国内のイヌワシの種の維持のためにも重要かつ不可欠です。岩手県の県庁所在地にイヌワシが生息することは盛岡市民にとっての誇りであり、多くの盛岡市民がイヌワシ保護を強く望んでおり、盛岡市ではこれを受けて、平成7年から3カ年でイヌワシ生息地を保全するために、近隣の営巣地一帯を市有地として取得しています。
 しかるに、エコ・パワー株式会社が平成24年5月に公表した「姫神ウインドパーク」事業計画によれば、この地域に20基もの風力発電用風車が建設されることになっています。すでに、全国各地の風力発電事業が野鳥の生息環境を損なっていることは広く指摘されていることですが、特に問題となるのは、自然の風を利用して生息している野生鳥類、特にイヌワシ等の猛禽類が高速で回転する風車に衝突して死亡するケース(いわゆるバードストライク)です。既に岩手県では、釜石広域ウインドファームにおいて、2008年9月にイヌワシ成鳥1羽が風車に衝突死しており、日本野鳥の会岩手県連絡協議会はこの事態を憂慮し、2008年12月8日付で事業主、岩手県知事及び環境省東北地方環境事務所長に対し、イヌワシ衝突の再発防止に関する要望書を提出しています。
 以上のことからも、この地域に大規模風力発電施設の建設を行えば、イヌワシに代表される稀少鳥類の生息において、採餌活動や繁殖活動の阻害、衝突死、渡りの阻害や渡り経路の遮断要因となるなどの悪影響は避けられません。私ども日本野鳥の会は、これからの日本のエネルギー資源として風力や太陽光等の自然エネルギーの積極的利用に基本的に賛成しています。しかし、それらの設置や運用が自然環境に負荷を与える恐れがある場合には、その負荷をできるだけ小さくするように設置計画を見直すべきであると考えます。そのため、日本野鳥の会もりおかは本事業の事業者であるエコ・パワー株式会社に対して、本計画の全面的見直しを強く求めています。環境省におかれても、稀少鳥獣保護の立場からエコ・パワー株式会社に対して、本計画の全面的見直しを行政指導していただくよう強く要望するものであります。

本件に関する問い合わせ先
日本野鳥の会もりおか
支部長 中村茂(TEL: 019-662-7151)
事務局 柴田俊夫(TEL: 019-622-9976)
日本野鳥の会自然保護室(TEL: 03-5436-2633、担当:浦達也)

以上


日野鳥発第 74 号
平成26年2月12日

日本野鳥の会もりおか
代表 中村 茂
公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 佐藤仁志

エコ・パワー株式会社
代表取締役社長 周布兼定 殿

「姫神ウインドパーク事業」の対象事業実施区域である
盛岡市玉山地区に生息する希少猛禽類と渡り鳥の保全に関する要望書

 貴社が計画されている「姫神ウインドパーク事業」について、対象事業実施区域の位置および風力発電機の設置基数や設置位置など事業内容を見直されることを強く要望いたします。

1.要望内容

(1) 環境影響評価書の確定に先立ち、平成24年9月21日付けで提出された環境省意見に沿うようにあらためて十分な環境影響評価を実施し、特に動物および植物に対する環境影響を可能な限り回避するよう、「姫神ウインドパーク事業」の対象事業実施区域の位置そのものを見直す、または地元の自然保護団体を含めた専門家の意見を聞きながら対象事業実施区域内における風車の設置基数や設置位置を見直し、希少猛禽類の生息に影響のない計画にすること。
(2) イヌワシなどの希少猛禽類が高い頻度で観察される場所において、その生息に影響のないよう対象事業実施区域の位置および設置基数や設置位置を見直すにあたっては、それらの採餌活動や繁殖活動に影響を及ぼさず衝突死を起こす恐れの少ない事業計画案を検討すること。特に風車の設置位置を猛禽類の生息地域や渡り鳥の経路からできる限り遠ざけ、かつ野鳥の衝突死の起こりにくい形状および大きさの風車を設置するなどの検討を行なうこと。

2.要望の背景

(1)整備予定地域の豊かな自然
1)整備予定地域の豊かな自然
 岩手県盛岡市北部の玉山地区から岩手町川口地区にかけては、山林・牧野・農耕地・河川・湖水等が組み合わさった豊かな自然環境が存在しています。
特に本事業の対象実施区域は姫神山南麓にある標高900m前後の尾根に位置し、外山早坂高原県立自然公園に隣接しています。
この地域では、一年を通して多種多様な野鳥が観察され、例えば、春から夏にかけてはキビタキ、ノビタキ、ノジコ、オオジシギなど数多くの夏鳥が繁殖し、春と秋はオオハクチョウやマガンのほか、様々な小型の渡り鳥がこの地域を通過することが知られています。さらに、この地域にはモズ、ヤマドリなどの留鳥も数多く生息しており、また、ベニマシコ、ツグミなどの冬鳥にとって重要な越冬地となっています。
 これまでの「日本野鳥の会もりおか」による鳥類調査によると、合計150種以上の野鳥が確認されており、中でもこの地域において特筆すべきことは、数多くの猛禽類が観測されている点で、これまでにクマタカ、ハヤブサ、ハチクマ、ハイタカ、ノスリなど様々な猛禽類が観察されており、このような生態系の頂点に位置する猛禽類の多様性は、その自然環境の豊かさの指標となっております。
2)天然記念物 イヌワシの生息地であること。
 特に私どものこれまでの調査結果では、対象事業実施区域を含む広範な山林牧野は我が国の天然記念物であるイヌワシの生息地となっており、複数のイヌワシが定期的に採餌等の活動を行う重要な場所であることが明らかになっています。
 環境省はレッドデータリストでイヌワシを「絶滅危惧IB類」に指定しており、日本全国でおよそ400羽しか生息していないと推定され、自然環境の豊かな岩手県ではそのうちの約20%の生息が確認されていることから、岩手県内のイヌワシ生息地の保全は日本国内のイヌワシの種の維持のために不可欠なものになっています。
 とりわけ、岩手県の県庁所在地である盛岡市内にイヌワシが生息することは市民にとっての誇りでもあり、多くの盛岡市民がイヌワシの保護を強く望んでおり、盛岡市ではこれを受けて平成7年から3カ年で、イヌワシ生息地を保全するため、近隣の営巣地一帯を市有地として取得しています。
(2)「姫神ウインドパーク事業」計画案では、イヌワシをはじめ、特に希少猛禽類に及ぼす影響が甚大であると懸念されること。
 一方、貴社が平成24年5月に公表した「姫神ウインドパーク事業」の計画案では、このイヌワシの生息地に20基もの風力発電用風車を建設することになっています。
すでに全国各地の風力発電事業が野鳥の生命そのものを脅かし、また、生息環境を損なっていることが広く指摘されていますが、特に問題となるのは、自然の風を利用して生息している鳥類、特にイヌワシ等の希少猛禽類が風車に衝突死するバードストライクです。
既に岩手県では、釜石広域ウインドファームにおいて2008年9月にイヌワシの成鳥1羽が風車に衝突死しており、日本野鳥の会岩手県連絡協議会はこの事態を憂慮し、2008年12月8日付で事業者、岩手県知事、環境省東北地方環境事務所長宛てに、イヌワシの衝突死事故の再発防止に関する要望書を提出しています。
(3) 日本野鳥の会もりおか及び日本野鳥の会の立場と見解
 私ども日本野鳥の会もりおか及び日本野鳥の会は、これからの日本のエネルギー資源として風力や太陽光等の自然エネルギーの積極的利用には基本的に賛同しています。
しかし、それらの設置や運用が自然環境に負荷を与える恐れがある場合には、その負荷をできるだけ小さくするよう、設置計画に対して中止を含めた必要な見直しを求めていきます。
とりわけ、これまでに述べたとおり、現行の計画案のままこの地域に大規模風力発電施設の建設を行えば、イヌワシに代表される稀少鳥類の生息に対して、採餌活動や繁殖活動の阻害、衝突死、渡りルートの阻害や遮断の要因となるなどの影響は避けられません。
このため、日本野鳥の会もりおか及び日本野鳥の会は、本事業の事業者である貴社に対し、まず、対象事業実施区域の位置そのものを全面的に見直していただくよう強く要望するものです。
おって、この要望書提出に際しては、環境省・岩手県・盛岡市など、関係行政機関等にも、提出した要望書の内容等を送付していますので、念のため申し添えます。

以上

要望書提出先
エコ・パワー株式会社 代表取締役社長 周布兼定殿
東京都品川区大崎1-6-1 TOC大崎ビルディング1号棟

本件に関する問い合わせ先
日本野鳥の会もりおか
代表 中村茂(TEL: 019-662-7151)
事務局 柴田俊夫(TEL: 019-622-9976)
日本野鳥の会自然保護室(TEL: 03-5436-2633/担当:浦達也)

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