
2014年11月13日
報道関係各位
日本野鳥の会 ウトナイ湖サンクチュアリは、今年の繁殖期(4~8月)に実施した苫東地域での調査で、国内レッドリストの絶滅危惧ⅠB類を3種、同Ⅱ類を2種、準絶滅危惧を2種、計7種もの絶滅のおそれのある鳥類の生息を確認しました。
このことから、同地域がウトナイ湖や釧路湿原などのラムサール条約湿地に勝るとも劣らない、重要な野鳥生息地であることが改めてわかりました。
一方、シマアオジ(同ⅠA類)は昨年に続き確認されず、アカモズ(同ⅠB類)は繁殖つがい数が減少するなど、これら希少鳥類が危機的な状況にあることも明らかになりました。
当会では今回の調査結果をもとに、同地域の貴重な自然環境の保全について、今後も関係者へより一層の働きかけを行なって参ります。(これまでの保全活動については、別紙資料2をご参照ください。)
なお、情報公表によって希少鳥類の繁殖へ悪影響が及ばないよう、発表をこの時期といたしました。また、詳しい確認位置等の公表は控えさせていただきますのでご了承ください。
確認された希少鳥類について
絶滅危惧ⅠB類のうち、シマクイナは繁殖期に確認されているのが日本国内では釧路湿原や仏沼(青森県)など限られた地域のみ、という非常に希少な鳥類です。苫東地域では今回、3年連続での確認となりました。さらに今年は、2地点において最大12羽(昨年は4羽以上)の声を確認したことから、複数のシマクイナが同地域で繁殖している可能性は非常に高いと考えられます。一方、同じくⅠB類のアカモズは、同地域で確認されたつがい数が2つがいと、昨年に比べ3つがい少ない結果となりました。また、2012年末に道道259号(上厚真苫小牧線)が全面開通した後、それまで沿線にあった営巣地はすべて失われており、今年も繁殖を確認できませんでした。これらの結果から、苫東地域でのアカモズの繁殖環境は減少傾向にあると考えられます。絶滅危惧Ⅱ類のタンチョウは、昨年の成鳥2羽に続き、弁天沼で若鳥1羽を確認しました。今回は別の単独個体ですが、2年連続で生息が確認されたことで、今後、弁天沼周辺が同種の繁殖地となる可能性は十分考えられます。
確認した鳥類についての詳細は、別紙資料1をご参照ください。

タンチョウ(2014年6月5日撮影)
問い合わせ先
日本野鳥の会 ウトナイ湖サンクチュアリ
担当:中村 聡(なかむら さとし)
松岡佑昌(まつおか ゆうすけ)
電話:0144-58-2505または080-2872-2709
別紙資料1
今回の調査で確認された希少鳥類
絶滅危惧ⅠB 類

シマクイナ(ツル目クイナ科 全長12 .5cm)

アカモズ(スズメ目モズ科 全長20cm)

チュウヒ(タカ目タカ科 全長:オス48cm、メス58cm)
絶滅危惧Ⅱ類

タンチョウ(ツル目ツル科 全長:140cm)

オジロワシ(タカ目タカ科 全長:オス80cm、メス90cm)
準絶滅危惧

マキノセンニュウ(スズメ目センニュウ科 全長12cm)

オオジシギ(チドリ目シギ科 全長30cm)
写真提供)
シマクイナ:宮 彰男氏、アカモズ・チュウヒ:新谷幸嗣氏、タンチョウ:玉田克巳氏、マキノセンニュウ:渡邉智子氏 、オジロワシ・オオジシギ:ウトナイ湖サンクチュアリ
注)写真の無断転載は固くお断りします。使用については、必ずご相談ください。なお、画像はデジタルデータで提供が可能です。
参考
環境省レッドリスト(日本の絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)における
カテゴリー(ランク)の概要 *環境省HP より
別紙資料2
日本野鳥の会の、苫東地域での自然環境保全活動
勇払原野は北海道三大原野のひとつとして、釧路湿原、サロベツ原野と並び数えられています。原野を構成する湿原の面積は、過去90 年で約8分の1に著しく減少しているものの、残された自然環境は、ラムサール条約湿地であるウトナイ湖を含み、水鳥、草原性鳥類、絶滅のおそれのある鳥類の生息地として重要な役割を果たしています。一方、同所では1960 年代の高度成長期に、第三次全国総合開発計画の一環として苫小牧東部開発計画がスタートしました。しかし、その後の社会情勢の変化により、当初計画の約1万700ha の土地の多くが未利用地域として残され、また農地として開拓された場所が放置され原野化し、結果として鳥類の良好な生息地となっています。
当会はこの優れた鳥類の生息環境を将来にわたって維持していくために、2000 年度から当該地域において鳥類調査を実施し、その生息状況から生息環境としての特徴を把握し、社会環境を考察して保全構想をまとめ、2006 年に「ウトナイ湖・勇払原野保全構想報告書」を発行しました。以来、希少種の調査や弁天沼周辺での自然観察会を通じ、同所一帯の保全活動を行っています。近年の主な活動は以下の通りです。
この他、「安平川下流域の土地利用に関する連絡協議会」(北海道主催。2008 年5月設置)委員として、安平川下流域の治水対策としての河道内調整地(遊水地)計画に対し、希少鳥類の生息環境保全の観点から意見を述べています。
以上