
2026年5月11日

<特定非営利活動法人バードリサーチ・公益財団法人日本野鳥の会 共同発表>

かつて北海道で観察されたシマアオジ(Photo by 三間久豊)
シマアオジはかつて1億羽以上がユーラシア大陸の広い草原で繁殖していたKamp et al (2015)と推定され北海道の湿原や草原で普通に見られた鳥ですが、近年個体数が急激に減少し、2025年には国内で1羽の繁殖も記録されませんでした。
この状況を受けて、特定非営利活動法人バードリサーチと、公益財団法人日本野鳥の会は共同で、クラウドファンディングによる資金調達を行い、初の多国間合同によるシマアオジの越冬ねぐら調査を実現させました。(2025年9月から11月にかけて、のべ411名の方から461万円のご寄付をいただきました。)
調査はシマアオジが冬ねぐらに集まる習性を利用し2026年2月中旬から3月中旬にかけて、ネパール、ミャンマー、タイ、カンボジアの4か国において実施されました。その結果、16か所のねぐらで、187,310羽のシマアオジを記録することができました。
完全ではないにしても、絶滅危惧種シマアオジの主要な越冬地である4か国において、合同で現時点の個体数を把握できたことは、今後の保全への非常に大きな一歩となりました。
シマアオジだけでなく農地や草原に生息する多くの鳥が減少していることが指摘されています。この合同調査の実現は、アジア地域における国際的な草原性鳥類の保全ネットワークの構築において、重要な最初の一歩となりました。
※この成果は、5月11日に調査参加国でもプレスリリースされます。
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シマアオジ(Emberiza aureola)のオスは黒い顔が特徴的で、背中側は栗褐色、お腹側は黄色いスズメ大の小鳥です。メスの顔は黒くなく、体の色もオスに比べて淡い色をしています。ユーラシア大陸北部に広く分布して繁殖する一方、越冬地は中国南部から東南アジアにかけての狭い地域に限られ、大きな群れをつくって渡り、群れで越冬する生態を持っています。


シマアオジは、1990年代以前にはユーラシアで最も普通に見られる草原性の鳥の一つと考えられていました。当時の個体数は1億羽以上いたと推定され、東アジアおよび南アジアの農地を、数万羽の群れで渡る姿が観察されていました。しかし、1980年から2013年の間に約84.3~95%もの個体数が失われるという急激な減少が起きたとされ(Kemp ほか)、2017年以降はIUCNレッドリストで深刻な絶滅危惧種(CE: Critically Endangered)に指定されています。
日本では1980年代まで北海道の草原や湿原、牧草地などに広く分布し繁殖していました。しかし1990年代になると個体数が減少し分布も縮小していきました。日本野鳥の会では国内で唯一のシマアオジの繁殖地とされるサロベツ原野で繁殖期の調査を行っていますが、2024年に複数個体のさえずりが確認されたのを最後に、2025年には1羽も記録されませんでした。環境省のレッドリストでは最も高いランクの(絶滅危惧I A類)に指定されています。
この急激な減少の主因は、渡りルート上で食用にかすみ網猟が大規模に行われてきたことにあると考えられていますが、生息地(湿地や農地)の消失や変化、農薬など農業化学物質の影響(直接または食物を介した影響)といった可能性も無視できません。


国境を越えて渡るシマアオジを保全するためには、国際的な連携と、現状の把握が不可欠です。彼らの置かれている現状を広く世界に周知し、減少要因と考えられるものを一つずつ減らしていかなければいけません。そして、定期的な個体数モニタリングを実施することで、取り組みの効果がシマアオジの個体群の回復に繋げられているのか、今もなお減少が続いているのかを把握することが必要です。
そのために、調査者、研究者、保全関係者のネットワークの構築が進められてきました。2021年の第1回アジア鳥類学会議(オンライン開催)では、タイの研究者からねぐら調査手法に関する提案と議論が行われました。
その後、2023年および2024年にミャンマー、タイ、カンボジアで会合が開催され、第2回アジア鳥類学会議(2024年 北京)でも、調査方法についてのセッションが設けられました。2025年3月には、タイのコンケンで国際ワークショップが開催され、ネパール、ミャンマー、タイ、カンボジア、ラオスの研究者が調査手法の改善について議論し、2026年2月中旬から3月中に合同センサスを実施することが決議されました。
バードリサーチでは、2022~24年度に地球環境基金の、2025年度に公益信託経団連自然保護基金の助成を受けてこれらの会合を開催し、調査方法の検討・共有を支援してきました。

繁殖期のシマアオジはなわばりを持つため広くばらけてしまいますが、越冬地では大きなねぐらを形成するため、効率よく個体数を調査することができます。越冬ねぐらでの個体数の調査は早朝、シマアオジがねぐらから飛び立つ時間帯に実施され、ねぐらを取り囲む調査員が飛び立つ個体数を記録する方法で行われました。
調査は2026年2月中旬から3月中旬にかけて、ネパール、ミャンマー、タイ、カンボジアの4か国において実施されました。その結果、16か所のねぐらで、187,310羽のシマアオジを記録することができました。
タイが最も多く6か所のねぐらで126,076羽を数え、ネパールでは5か所で1,741羽、ミャンマーでは3か所で49,086羽、カンボジアでは2か所で10,407羽が確認されました。
この調査には4か国から105名の調査員(ネパール36名、ミャンマー25名、タイ32名、カンボジア12名)が参加して実施されました。日本からもバードリサーチの2名がタイでの調査に参加しました。

今回の調査でシマアオジが確認されたねぐらの位置。〇の大きさは個体数を表す。
近年、ヨーロッパ、北米、アジアの多くの地域で、農地や草原といった開放的環境に生息する鳥の減少が顕著であることが明らかになっています。シマアオジの減少は、本種だけの問題ではなく、農地や草原に生息する生き物たちの危機を知らせる警鐘だと言えます。
今後、我々は、シマアオジだけでなく、他の草原性鳥類の調査や保全に関する国際ネットワークを強化し、ねぐら調査の対象地点や対象国の拡大を目指します。この国際ネットワークの構築は、アジアにおける草原性鳥類の保全における大きな一歩となるはずです。
Kamp, J., Oppel, S., Ananin, A.A., Durnev, Y.A., Gashev, S.N., Hölzel, N., Mishchenko, A.L., Pessa, J., Smirenski, S.M., Strelnikov, E.G., Timonen, S., Wolanska, K. and Chan, S. (2015), Global population collapse in a superabundant migratory bird and illegal trapping in China. Conservation Biology, 29: 1684-1694.
https://doi.org/10.1111/cobi.12537
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