2019年6月13日
主催:三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館
共催:コーラル・ネットワーク
2019年6月12日、三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館、コーラル・ネットワークが共同で、世界共通のサンゴ調査である「リーフチェック」を実施した。実施した場所は三宅島の西側に位置する富賀浜のテーブル状サンゴ群集と、伊ヶ谷のカタン崎沖のサンゴ群集である。
調査を実施した結果、富賀浜では、調査範囲の61%程度がサンゴに覆われ、カタン崎においても、38%程がサンゴに覆われており、ともに健全な状態であった。
三宅島では1998年より調査を開始し、2000年の雄山噴火に伴う全島避難で一時調査を中断した。2005年の帰島以後は、2007年以外毎年実施し、今回の調査は16回目となる。今回はコーラル・ネットワークのリーフチェックコーディネーター1名、駒沢大学応用地理研究所所員1名、島内のダイビングショップインストラクター2名、ボランティアダイバー3名、日本野鳥の会の職員でアカコッコ館のスタッフ2名で富賀浜と伊ヶ谷のカタン崎を調査した。
世界共通の調査方法に準じ、サンゴ群集上にメジャーで100mのラインを設置し、ライン直下の構成種を造礁サンゴ、海藻、砂床など10種に分類し記録した。あわせて、ライン周辺の魚やエビ、ウニなど世界共通の対象種および三宅島独自対象種の生き物の数を記録した。
富賀浜のテーブル状サンゴ群集
※リーフチェックとは
サンゴ礁の健康度を測るために世界同一基準で用いられているモニタリング調査で1997年に始まった。アメリカ・カリフォルニアに本部を置く民間団体が推進している。調査は科学者とボランティアダイバーでチームを編成し、サンゴ、魚類、海底の生物など国際基準の調査項目を潜水して調査し、調査結果をインターネットを通じて本部に送る。各地の結果は毎年本部で取りまとめられ、ホームページなどを通じて公表される。
テーブル状および被覆状のサンゴを中心に、61%程度が造礁サンゴに覆われていた。この数値は昨年の71%に比べ減少傾向にあったが、調査側線の位置ずれも要因の一部として考えられ、そのほかの要因については特定できなかった。造礁サンゴが減少したものの高い被度の造礁サンゴ群集が維持され、このテーブル状サンゴ群集自体は依然として伊豆諸島最大級であると思われる。海藻類の減少もが見られたが、これは前年より調査時期が早かったことが一要因であると思われる。
調査区域内ではオニヒトデやサンゴ食の巻き貝は確認できず、それらによる食痕もみられていない。調査ライン周辺ではハタタテダイやヤリカタギなど南方種のチョウチョウウオを含め、多くのチョウチョウウオ類が確認された。無脊椎動物は年による増減幅があるが、昨年よりは増加していた。また例年はほぼ見られていなかった漁網くずが数か所で見られるなど漂着ごみが目立った。
調査風景(富賀浜)
被覆状および塊状のサンゴを中心に、38%程が造礁サンゴに覆われ、昨年と同程度であった。
オニヒトデおよびサンゴ食の巻き貝はなく、食痕も確認されておらず、健全な状況を保っていた。
サンゴ周辺の生き物では、調査対象の魚類は特に目立った変化がなく、無脊椎動物においてオトヒメエビが例年にくらべ、多く確認された。
調査風景(カタン崎)
富賀浜の調査範囲の造礁サンゴは、1998年の調査開始以来、ここ2年は高い割合を維持している。依然として伊豆諸島最大級のテーブル状サンゴ群集であると思われる。
造礁サンゴを食害するオニヒトデおよびサンゴ食の巻貝は、どちらの調査範囲内でも認められず、食痕も認められない事から、これらの生物による影響は少ない状況が継続している。
これらの点から両地点ともサンゴの生育環境として健全な状態が保たれていると考えられる。今後も継続的に二地点の造礁サンゴ群集の状況の推移を見守っていきたい。
調査メンバー