2020年7月14日
主催:三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館
共催:コーラル・ネットワーク
2020年7月13日、三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館、コーラル・ネットワークが共同で、世界共通のサンゴ調査である「リーフチェック」を実施した。実施した場所は三宅島の西側に位置する富賀浜のテーブル状サンゴ群集と、伊ヶ谷のカタン崎沖のサンゴ群集である。
調査を実施した結果、富賀浜では、調査範囲の82%程度がサンゴに覆われ、カタン崎においても、33%程がサンゴに覆われており、ともに健全な状態であった。
三宅島では1998年より調査を開始し、2000年の雄山噴火に伴う全島避難で一時調査を中断した。2005年の帰島以後は、2007年以外毎年実施し、今回の調査は17回目となる。今回はコーラル・ネットワークのリーフチェックコーディネーター1名、駒沢大学応用地理研究所所員1名、島内のダイビングショップインストラクターおよびスタッフ3名、ボランティアダイバー1名、日本野鳥の会の職員でアカコッコ館のスタッフ1名で富賀浜と伊ヶ谷のカタン崎を調査した。
世界共通の調査方法に準じ、サンゴ群集上にメジャーで100mのラインを設置し、ライン直下の構成種を造礁サンゴ、海藻、砂床など10種に分類し記録した。あわせて、ライン周辺の魚やエビ、ウニなど世界共通の対象種および三宅島独自対象種の生き物の数を記録した。
富賀浜のテーブル状サンゴ群集
※リーフチェックとは
サンゴ礁の健康度を測るために世界同一基準で用いられているモニタリング調査で1997年に始まった。アメリカ・カリフォルニアに本部を置く民間団体が推進している。調査は科学者とボランティアダイバーでチームを編成し、サンゴ、魚類、海底の生物など国際基準の調査項目を潜水して調査し、調査結果をインターネットを通じて本部に送る。各地の結果は毎年本部で取りまとめられ、ホームページなどを通じて公表される。
テーブル状および被覆状のサンゴを中心に、82%程度が造礁サンゴに覆われていた。この数値は調査を開始して以来、最高であった。これは、富賀浜のサンゴ群集が健全な状況を維持していることを示している。
このテーブル状サンゴ群集自体は依然として伊豆諸島最大級であると思われる。
調査区域内ではオニヒトデやその食痕もみられていない。調査ライン周辺の魚類は三宅島独自の調査対象種であるニシキベラが多く、過去最高の数を記録した。それ以外の種に関しては例年通りであった。無脊椎動物は独自対象種であるナガウニ類が多く記録されたが、サンゴの増減とは関係がない。昨年からところどころで漁網くずが見られたが、今年はさらに増えていた。
調査風景(富賀浜)
被覆状および塊状のサンゴを中心に、33%程が造礁サンゴに覆われていた。この結果は3年連続の減少傾向となった。
オニヒトデおよびサンゴ食の巻き貝はなく、食痕も確認されていないが、ホワイトシンドロームと思われる病気にかかったサンゴが見られた。
サンゴ周辺の生き物では、調査対象の魚類および無脊椎動物ともに目立った変化がなかった。
調査の様子(カタン崎)
富賀浜の調査範囲の造礁サンゴは、1998年の調査開始以来、ここ数年は高い割合を維持している。依然として伊豆諸島最大級のテーブル状サンゴ群集であると思われる。造礁サンゴを食害するオニヒトデやその食痕は確認されなかった。その他留意する点としては漁網くずが見られるなど漁具由来のごみが増えており、今後も継続的に二地点の造礁サンゴ群集の状況の推移を見守っていきたい。