2022年7月14日
主催:三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館
共催:コーラル・ネットワーク
2022年7月11日、三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館、コーラル・ネットワークが共同で、世界共通のサンゴ調査である「リーフチェック」を実施した。実施した場所は三宅島の西側に位置する富賀浜のテーブル状サンゴ群集と、伊ヶ谷のカタン崎沖のサンゴ群集である。
調査を実施した結果、富賀浜では、調査範囲の74%程度がサンゴに覆われ、カタン崎においても、47%程がサンゴに覆われており、ともに健全な状態であった。
三宅島では1998年より調査を開始し、2000年の雄山噴火に伴う全島避難で一時調査を中断した。2005年の帰島以後は、2007年以外毎年実施し、今回の調査は19回目となる。今回はコーラル・ネットワークのリーフチェックコーディネーター1名、駒沢大学応用地理研究所所員1名、島内のダイビングショップインストラクターおよびスタッフ5名、ボランティアダイバー2名、日本野鳥の会の職員でアカコッコ館のスタッフ1名で富賀浜と伊ヶ谷のカタン崎を調査した。
世界共通の調査方法に準じ、サンゴ群集上にメジャーで100mのラインを設置し、ライン直下の構成種を造礁サンゴ、海藻、砂床など10種に分類し記録した。あわせて、ライン周辺の魚やエビ、ウニなど世界共通の対象種および三宅島独自対象種の生き物の数を記録した。
※リーフチェックとは
サンゴ礁の健康度を測るために世界同一基準で用いられているモニタリング調査で1997年に始まった。アメリカ・カリフォルニアに本部を置く民間団体が推進している。調査は科学者とボランティアダイバーでチームを編成し、サンゴ、魚類、海底の生物など国際基準の調査項目を潜水して調査し、調査結果をインターネットを通じて本部に送る。各地の結果は毎年本部で取りまとめられ、ホームページなどを通じて公表される。
テーブル状および被覆状のサンゴを中心に、74%程度が造礁サンゴに覆われていた。過去の富賀浜での造礁サンゴの平均値は約56%のため、昨年度に続き、高い数値を維持しており、今年の結果は依然として富賀浜のサンゴ群集が健全な状況を維持していることを示している。このテーブル状サンゴ群集自体は依然として伊豆諸島最大級であると思われる。
調査区域内ではオニヒトデやその食痕もみられていない。また、ほかのサンゴ食の生き物による食痕も見られていない。調査ライン周辺の魚類については例年通りであった。無脊椎動物はシャコガイが記録された。富賀浜での調査では初記録となったが、地元ダイバーによると、この海域ではときどき見られるとの事である。そのほかの無脊椎動物においては例年通りの結果となった。2019年からところどころで見られていた漁網くずが今年も数カ所で見られ、目立つものは除去しておいた。
調査の様子(富賀浜)
被覆状および塊状のサンゴを中心に、47%程が造礁サンゴに覆われていた。2年前の結果に比べ増加しており、3年続いた減少から回復傾向となった。また、過去のカタン崎での造礁サンゴの平均値は約38%のため、カタン崎のサンゴ群集が健全な状況を維持していることを示している。
オニヒトデが1匹確認されたが、ほかのサンゴ食の生き物は確認されず食痕も確認されなかった。サンゴ周辺の生き物では、調査対象の魚類および無脊椎動物ともに目立った変化がなかった。
調査の様子(カタン崎)
富賀浜の調査範囲の造礁サンゴの割合は、1998年の調査開始以来、ここ数年は値を維持しており、依然として伊豆諸島最大級のテーブル状サンゴ群集であると思われる。今回の調査において、造礁サンゴを食害するオニヒトデが1匹確認された。しかし、オニヒトデによる造礁サンゴの食害痕は周辺で確認されなかったことから、造礁サンゴ群集に対する影響は少ないと考えられる。その他、留意する点としては漁網くずが見られるなど漁具由来のごみが増えており、マイクロプラスチックなど海洋ゴミが問題として注目される今、今後も継続的に三宅島における海洋ゴミの状況を見守る必要があると考えられる。
海底を自由に動くことができないサンゴは、その海域の水温などの影響を強く受けるために、海域環境の指標ともされる生き物である。今後、伊豆諸島最大の造礁サンゴ群集のリーフチェック調査は、伊豆諸島海域における浅海域生態系への温暖化の影響を知るための、重要なモニタリング活動と位置付けられる。今後も、三宅島におけるリーフチェックが継続されることを強く望みたい。
調査メンバー