2024年10月23日
主催:三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館
共催:コーラル・ネットワーク
三宅島では1998年より調査を開始し、2000年の雄山噴火に伴う全島避難で一時調査を中断した。2005年の帰島以後は、2007年以外毎年実施し、今回の調査は21回目となる。今回はコーラル・ネットワークのリーフチェックコーディネーター1名、駒沢大学応用地理研究所所員1名、島内のダイビングショップインストラクターおよびスタッフ3名、ボランティアダイバー1名、日本野鳥の会の職員でアカコッコ館のスタッフ1名で富賀浜と伊ヶ谷のカタン崎を調査した。
世界共通の調査方法に準じ、サンゴ群集上にメジャーで100mのラインを設置し、ライン直下の構成種を造礁サンゴ、海藻、砂床など10種に分類し記録した。あわせて、ライン周辺の魚やエビ、ウニなど世界共通の対象種および三宅島独自対象種の生き物の数を記録した。
※リーフチェックとは
サンゴ礁の健康度を測るために世界同一基準で用いられているモニタリング調査で1997年に始まった。アメリカ・カリフォルニアに本部を置く民間団体が推進している。調査は科学者とボランティアダイバーでチームを編成し、サンゴ、魚類、海底の生物など国際基準の調査項目を潜水して調査し、調査結果をインターネットを通じて本部に送る。各地の結果は毎年本部で取りまとめられ、ホームページなどを通じて公表される。
海底の23%程度が造礁サンゴに覆われていた。昨年度は69%のため、大幅な減少となった。さらに白化率※が100%と、確認された生きているサンゴの全てが白化している状態であった。
調査区域内ではオニヒトデや他のサンゴ食生物による食痕もみられていない。調査ライン周辺の魚類についてはおおよそ例年通りの魚種を確認した。無脊椎動物においてはガンガゼ類が大幅に増えた。2019年から見られていた漁網くずが年々増加傾向にあり、今年も数カ所で見られた。
※白化率(%)の算出方法 (白化サンゴ+白化による死サンゴ)/(生存サンゴ+白化サンゴ+白化による死サンゴ)×100
調査の様子(富賀浜)
海底の24%程が造礁サンゴに覆われていた。カタン崎においても昨年の結果(43%)より大幅に減少し、かつ白化率が89.4%と大部分が白化していた。
サンゴ食の生き物ではサンゴ食の巻貝がわずかに確認されたが、オニヒトデは確認されていない。サンゴ周辺の生き物では、調査対象の魚類には目立った変化がなかったが、無脊椎動物においては富賀浜同様ガンガゼ類が大幅に増えた。
調査の様子(カタン崎)
2024年は、世界的にサンゴの白化現象が確認された。三宅島周辺海域においても、これまでに記録したことが無いほどの大規模な白化現象が確認された。
三宅島における今夏の白化現象は、8月初旬に確認され始め、8月の中頃に急激に拡大した。これは、三宅島の周辺海域の海水温が8月以降に高い状態となることと関連している。今回のリーチェックでは、継続的に調査を実施している富賀浜、カタン崎の両地点において海底の状況を調べた結果、昨年度よりサンゴの数が減少しているとともに、多くのサンゴが白化および死滅した状態であることを確認した。とくに冨賀浜では、広範囲にわたってエンタクミドリイシの群生が広がっていたが、ほぼすべてのエンタクミドリイシが死滅し、表面を藻が覆っている状況であった。
海底を自由に動くことができないサンゴは、その海域の水温などの影響を強く受けるために、海域環境の指標ともされる生き物である。今回の三宅島におけるサンゴの大規模白化は、三宅島の周辺海域において、8月以降これまでに経験したことが無い高水温の状況が継続した影響であると考えられる。また、三宅島は温帯域に位置し、特に富賀浜では特定の造礁サンゴが広範囲に生息していたため、白化現象が広範囲に広がったものと推測される。
三宅島では、今回の大規模なサンゴの白化現象により、サンゴが減少するとともに他の生物にも影響が及ぶことも考えられる。今後も調査を継続し、三宅島の海域環境の変化に注視する必要があると考えらえる。
調査メンバー