A.野鳥のヒナの多くは、卵からかえって羽が生えそろうとすぐに巣立つので、巣から飛び出す段階ではうまく飛べずに落ちるものもいます。しかし、ケガをしていなければ、親鳥が給餌や誘導をするうちに、少しずつ飛べるようになると考えられます。
A.巣立ち直後のヒナの近くには、親鳥がいます。人がヒナの近くにいると、親鳥は警戒してヒナに近づいてきません。人は、そっとその場を離れるとよいでしょう。
A.心配ならば、ヒナを近くの茂みの中に置いておくこともできます。親鳥は姿が見えなくても、ヒナの声で気づくことができるでしょう。
A.たくさんの虫を与え続けるなどすれば、育てられることもあります。ただ、自然界では巣立ち後に親鳥と過ごすわずかな期間(1週間から1ヶ月)に「何が食物で、何が危険か」などを学習してひとり立ちするので、人に育てられたヒナは自然の中で生きていけるとは限りません。
なお、ケガをしている希少種など、放っておけないと判断された場合は、各都道府県の野生鳥獣保護担当機関に相談してください(野鳥は許可なく捕らえたり、飼うことはできません)。
自然界での命の原則は、他の生物の食物になること。野鳥の世界も毎日命がけですが、わずかでも生きのびれば1年で大人になって子育てを始め、毎年繰り返します。つまり、生き残る方が少ないので、野鳥はたくさんの卵を産み、その多くは、大人になる前に他の生き物に食べられてしまいます。そのため、いかに短期間でヒナを成長させ巣立たせるかということが重要です。
スズメは5個くらい卵を生み、かえったヒナは約2週間で巣立ち、その後1週間くらいを親子で過ごしてからひとり立ちし、親鳥はまた卵を産むというサイクルを、春から夏にかけて繰り返すようです。なお、巣立ちまでの期間は、メジロやヒヨドリでは10日ほどしかなく、シジュウカラ・ツバメ・ムクドリなど3週間ほどかかるものもいます。
鳥も私たち人間と同じで、他の命を食べなくては生きていけません。体重15グラムほどのシジュウカラでも、1年間に必要な虫は10万匹を超えるという試算もあるほどです。
秋冬に虫が少なくなると、木の実などの植物質も食べるようになる小鳥も少なくありません。しかし、子育てには高栄養で消化しやすい虫が必要なので、虫が多い春から夏を子育てシーズンとするのが普通です。スズメでは、ヒナを巣立たせる2週間に親鳥が虫を運ぶ回数は、4千回を超えるといわれています。
小鳥は虫を食べることによって、虫が増えすぎることを抑え、その結果、植物が食べつくされることを防いでいます。また、小鳥のヒナは、その大部分が大人になるまでの間に、他の生き物に食べられることで、その生き物の命を支えています。ヒナの命のみに目を奪われることなく、大きな自然の仕組みに目を向けて、学ぶ姿勢が大切です。