公益財団法人 日本野鳥の会

Toriino(トリーノ)2008年の発行号

第9号 2008年12月発行号

トリーノ表紙
表紙:加山又造「千羽鶴」(部分)
1970年

「彩の章」 写真:前田真三
吐く息も凍る冬の一日。シャーベット状の海氷は、ざわざわと音を立てながら岸に押し寄せていた。それはまるで陽の光を受けて膨張する巨大生物のようであった。(誌面より)
「憶の章」 写真:長野重一
正しいことも、誤っていることも、人は見ていなくとも神様は見ていると昔聞いた。繁栄、衰退、破壊。そこにはいつも静止した時空間が微笑んで見ていた。(誌面より)
「流の章」 写真・文:藤原新也
かつて神社や寺、路地裏には、人も動物も交錯する空間があった。そこで子どもは学び、大人は支えあった。それは、多層な「揺らぎの空間」だったのかも知れない。(誌面より)
「響の章」 写真:岩合光昭
厳冬のいんちょん仁川。この先には緊張の地帯、三十八度線がある。横殴りの風の中から何かが散るようにスズメの群れが現れた。日本と同じ彼らの表情には、憎しみも対立もなかった。(誌面より)

第8号 2008年9月発行号

トリーノ表紙
表紙:脇田 和「金環」
1987年 油彩、キャンバス

「彩の章」 写真:前田真三
倒れた大樹に、ひっそりと赤い実をつけたゴゼンタチバナの姿があった。風倒木に支えられる命の世界は、銀河に輝く新星のようであった。(誌面より)
「憶の章」 写真:川田喜久治
壁のひびは瞬く間に無数に走り、一点のどす黒いしみは脈打ちながら膨張し始めた。巨大化するしみに窒息しそうになった刹那、記憶を封印した壁は静かにそこにあった。(誌面より)
「流の章」 写真・文:藤原新也
海の環境変化は、陸で生活するものには見えにくい。しかし、海の生態系は陸の生態系以上に微妙なバランスで成り立っている。海に竿を垂れて人の世を知る。(誌面より)
「響の章」 写真:岩合光昭
乾期の湖は、野生生物にとってオアシスであり、生命のドラマが繰り広げられる舞台でもある。トラの餌食になることを警戒しつつ草をはむサンバーに、チュウサギもまた獲物をねらっていた。(誌面より)

第7号 2008年6月発行号

トリーノ表紙
表紙:脇田 和「卵を抱く」
油彩、キャンバス 1995年

「彩の章」 写真:前田真三
水の流れは無為自然にして、一つとして同じものはない。そんな無為自然の流れは、長い年月をかけて「神々の庭」を創りだした。(誌面より)
「憶の章」 写真:大竹省二
貧しく、約(つま)しかったかもしれない。でも他を慈しみ思う心に、空も大地も草木もやさしく微笑んだ。(誌面より)
「流の章」 写真・文:藤原新也
祈りあるところにアウラ(霊気)はある。そしてアウラは、人の手によって無情のものへと吹き込まれる。(誌面より)
「響の章」 写真:岩合光昭
そこはクロアシアホウドリの楽園のはずだった。白い珊瑚礁の島には、馴染みある言葉で書かれた塵が散乱し、人のエゴが吐き出された光景が広がった。(誌面より)

第6号 2008年3月発行号

トリーノ表紙
表紙:脇田 和「なすびと鳥」
油彩、キャンバス 1993年

「彩の章」 写真:前田真三
一片、また一片、花は散り行く。花は留めどなく散り、時への悲哀が胸を衝いた。(誌面より)
「憶の章」 写真:薗部 澄
風は子守唄のように、やさしくこの土地に語りかけ、水はころころと玉のような音を立てて流れた。(誌面より)
「流の章」 写真・文:藤原新也
変わりゆく風景、変わりゆく気候。記憶は今を映す。(誌面より)
「響の章」 写真:岩合光昭
澄んだ空気が森に充ちる朝。突然、その静寂を破って枝が揺れた。揺れる枝先に、キンショウジョウインコの花が咲いた。(誌面より)
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