日本野鳥の会は「減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク」の一員として、WWFジャパン、グリーンピース・ジャパンなどのNGOや市民団体とともに、使い捨てプラスチックの削減や、生態系への廃棄禁止など、法的な規制を伴う事項について共同で提言活動を行っています。
2020年10月13日、減プラスチック社会を実現するNGOネットワークのメンバー及び賛同20団体は、9月1日に政府より示された「今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性(「基本的方向性」)に対し、笹川環境副大臣あてに、深刻なプラスチック汚染を確実に解決できるような指針としていくよう求める共同提言書を提出しました。今後速やかに、関係省庁や政党にも提出する予定です。
深刻化するプラスチック汚染を解決するには、容器包装を中心にプラスチック製品の生産総量を大幅に削減(リデュース)することと、そのための社会システムの構築が、喫緊の課題です。しかし、基本的方向性では、「リデュースの徹底」といった言葉は使われているものの、実質的には、代替品利用とリサイクルの推進、そして熱回収が解決案の中心となっています。
プラスチック生産の増加を放置したまま、熱回収や代替品の促進を推進していくのでは、問題の解決にはなり得ません。また、漁業活動等、海域で使用するプラスチックの問題への更なる対応や、拘束力のある国際的な解決の枠組みを早急に発足させることも重要です。
提言の内容は、以下をご覧ください。
2020年10月13日
「今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性」への共同提言
ー代替品や熱回収より「総量削減・リユース」をー
減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク
令和2年9月1日、産業構造審議会 産業技術環境分科会 廃棄物・リサイクル小委員会 プラスチック資源循環戦略ワーキンググループ、及び、中央環境審議会 循環型社会部会 プラスチック資源循環小委員会の合同会議により、「今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性」(以下、「基本的方向性」という)が示された。深刻なプラスチック汚染の問題が顕在化する中で、それを確実に解決できるような指針としていく必要がある。
日本で発生する廃プラスチックの量は、年間891万トンと世界で3番目に多いが、その内735万トン(82%)を、熱回収を含む温室効果ガスを発生させる焼却処理や、海外輸出、及び埋め立てに依存している*1。また、廃プラスチックの47%は、ほとんどが使い捨て用途の容器包装・コンテナ類(以下、「容器包装」)であるが*1、コロナ禍の状況下で、発生が増加傾向にある。容器包装を中心に、バージン材によるプラスチック製品の生産総量を大幅にリデュースすること、及び、それを可能とする社会システムを構築することが、喫緊の課題である。しかし基本的方向性では、「リデュースの徹底」といった言葉は使われているものの、実質的には、代替品利用とリサイクルの推進による、結果的な削減を見込んでいる。
上記を踏まえ、以下の通り循環型社会形成推進基本法で示された、
1.削減(リデュース)
2.再使用(リユース)
3.再生利用(リサイクル)
という廃棄物管理の基本的な優先順位に立ち返る必要がある。また、代替品の使用を廃プラスチックのリデュースと位置付けてしまうと、代替品が過剰生産され、原材料栽培地への転換による原生林の伐採、土壌の流出、貯蔵炭素の放出など、新たな環境問題を発生させる可能性がある。よって、代替品の使用は、リデュース、リユースが出来ない場合に、補完的な位置づけとして検討されるべきである。
また世界で最も広い範囲に海洋ごみが集中して漂う、日本の国土の4倍以上の広さの「太平洋ごみベルト」と言われる海域においては、ごみの総量の46%をプラスチック素材の漁網が占めており、また、文字が認識できるごみの1/3に日本語が記載されていた*2。漁網等の漁具など海域より発生するものが、海洋プラスチックごみ全体の1から2割を占めており、漁具の流出抑制や回収、適正処理の促進も、優先度の高いプラスチック資源施策として含めるべきである。そして、国際的なプラスチック汚染問題を解決するための国際的な枠組みが存在しない状況下において、法的拘束力のある国際協定の締結に向けて、日本がリーダーシップを発揮していくことが強く期待されている。
ついては、減プラスチック社会を実現するNGOネットワークのメンバー及び賛同20団体は、以下の通り提言する。
上記の提言を基本的方向性に取り入れることにより、プラスチックを使い捨てにする社会から早期に脱却し、リデュース・リユースを基本とした社会に移行することが、プラスチック汚染を防ぎ、脱炭素社会を目指すためにも必要不可欠である。これは、ウィズコロナ、ポストコロナの社会で求められる「グリーンリカバリー」を実現することにつながり、地球の再生能力の範囲内で投入資源を最大限循環させることで新たな資源投入をゼロに近づけるという「サーキュラーエコノミー」の考え方にも沿っている。世界で使い捨てプラスチック容器包装の2割をリユース可能なものに切り替えるだけで1兆円以上のビジネスチャンスが見込まれるなど*3、この移行は新たな経済価値を生み出すと見られており、国際潮流となりつつあるこの分野で日本が国際的競争力を発揮していくためにも、以上6項目を提言する。
*1 プラスチック循環利用協会(2019)による2018年の実績。熱回収503万トン、単純焼却73万トン、輸出91万トン、埋立68万トン。
*2 Lebreton et al. (2018)
*3 エレンマッカーサー財団 (2019)