公益財団法人 日本野鳥の会

保護への取組み

 当会では2007年度より、絶滅危惧種の現状について情報を収集するとともに、従来からあまりデータのない特定の鳥の生息分布や繁殖状況、生息環境等に関して、会員や支部の皆様にも協力をいただきながら調査しており、この特定種の一つとしてチュウヒの情報収集や調査を行っています。
 チュウヒは従来、絶滅危惧Ⅱ類の鳥でしたが、2006年12月に発表された環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類に指定されました。近年はさらに生息状況が悪化、個体数が減少したことから、2016年には環境省により「チュウヒの保護の進め方」が作成され、また、当会や支部の皆様の働きかけにより、2017年には種の保存法による国内希少野生動植物種に指定されており、クマタカ、イヌワシ、オジロワシ、タンチョウやシマフクロウなどと並び、近い将来における野生での絶滅の危険性が高い鳥です。

 チュウヒは局所的にではあるものの全国の干拓地や河口、湖沼岸などの湿地に広がるヨシ原を主な生息地としていますが、そのような環境は開発行為の影響を受けやすく、近年は全国的に生息地の数や繁殖個体数が減少しています。本州以南では、2000年頃から干拓や埋め立て後に利用されなくなった土地にヨシが成育し、営巣地となっている例がみられます。しかし、そういった場所の多くは再開発または植生の遷移により、繁殖に不適な環境となってきており、私達が常に留意していないと、さらにチュウヒの繁殖個体数を減少させてしまう可能性があります。
 チュウヒの繁殖環境を守るためには、彼らがどこで繁殖し、どのような環境を好むのかを知らなければなりませんが、環境省によるチュウヒの保護の進め方にあるように、それらはまだ本州の一部の地域でしか調べられておりません。また、北海道のチュウヒは本州で多い干拓地等とは違い、自然または半自然の湿地や草地に生息するなど、地域によっても繁殖環境が違います。このように、チュウヒの繁殖環境についての国内資料が充分ではないため、さらに情報を集めていき、適切な保全策を講じていかなければなりません。


繁殖つがい数が多い勇払原野・弁天沼上空を舞うチュウヒ。

この取組みで目指すもの

 国内で繁殖するチュウヒは環境省により90つがいと推測されていますが、特に北海道ではまだ知られていない繁殖地が存在するのではないかと考えています。そのため当会は、北海道を中心にチュウヒの繁殖状況を調査しています。

【過去の調査・取組み】

【現在の調査・取組み】

2016年~2017年にかけて、大規模な風力発電計画が存在する北海道北部の宗谷振興局西部で、野鳥と風力発電のセンシティビティマップを作成するために、繁殖期の鳥類相(鳥類全般・希少猛禽類)、渡り鳥の飛来状況(ガン・ハクチョウ類、猛禽類)・越冬状況(海ワシ類)について調査を実施しましたが、その調査の中で、この地域がチュウヒにとって日本最大の繁殖地であることが判明しました。
そのため、チュウヒの日本最大の繁殖地を保護すべく、当会は2017年よりサロベツ原野でチュウヒの繁殖状況や風力発電施設の建設による影響について調査を行っています。今後は、調査を継続しつつ、その成果を生かしながら、サロベツ原野を有する豊富町で、チュウヒ保護に対する取り組みへの意識が高まるように普及活動を行います。
また、北海道内のチュウヒの繁殖数はよく把握されていませんので、当会は北海道全域を対象に繁殖期におけるチュウヒの分布状況を調査し、道内のチュウヒの繁殖個体数の推定を試みています。

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