
1988年に横浜自然観察の森を支えるボランティア組織として設立された「横浜自然観察の森友の会」は、現在約150名の会員によって運営されています。横浜市、ボランティアグループ「友の会」、当会の三者協働で活動する中で、友の会のメンバーから見た日本野鳥の会のレンジャーとはどんな存在だったのでしょう。
「会員の数だけレンジャーとの物語がある」と話すのは、友の会会長の山口博一さん。今回は山口さんに、これまでをふりかえって横浜自然観察の森で活動を始めたきっかけや、様々な活動の中でのレンジャーとのエピソードを教えていただきました。
2026年9月10日
文・横浜自然観察の森友の会会長 山口 博一
大学入学直後、横浜自然観察の森を初めて訪れた春にレンジャーの原田修さんから環境管理作業のアルバイト集めを頼まれたのが最初の活動でした。身近な森で作業できることは大変魅力的でしたのでサークルのメンバーや各大学に声をかけて学生を集め、夏季の草刈など相当過酷な作業にレンジャーと共に汗を流したのは楽しい思い出です。大学での活動や実習などとは少し違って同じ目線・近い関係で予測不能のお仕事と向き合えるのが面白い点でもありました。
“原田元レンジャー、あんなに抜き続けても無くならなかったセイタカアワダチソウは
今では随分と減りましたよ。”
また、自然保護を進める拠点施設で積極的に木を伐るというのも当時としては画期的な活動でしたが、レンジャーの古南幸弘さんと始めた雑木林ファンクラブの活動はその後現在まで続くプロジェクトであると同時に、観察の森全体の保全管理計画に基づく市民参加の順応的管理へとつながる重要な活動でした。
外来種のセイタカアワダチソウは、友の会のメンバーや横浜市内の企業の皆さんなど、多くの人の手で除去され、在来種の草地が維持されている
わたし(左:山口)も雑木林ファンクラブの活動で汗を流した
当時大学で木質科学を学んでいた自分にとって炭焼きの科学解説などでちょっぴり役立つことができたのはうれしいことでした。様々な分野に興味を持つ多様なボランティアや生きもの・環境保全など各方面の専門家を繋いで持続性のある活動を編み出していくのも大切な役割です。
“古南レンジャーが昔、何のキャラクターのお面をつけたことがあるかは内緒です。”
初代チーフレンジャーの川村研治さんは友の会の初代事務局長でもありましたが、家族ぐるみでいつも自然観察センターにいる賑やかな存在でした。特に都市部では他に類を見ない施設でしたので、活動家など実に多彩な人が出入りしていて活気があり、その混沌の中からプロジェクト制や初年度にして107名の会員登録獲得、横浜市・野鳥の会・友の会の3者パートナーシップなど今につながる施設運営の基盤を作ってくださいました。
“事務室にたむろしていると川村元レンジャーのダジャレの雨に晒されるのですが、酷暑の今こそ、あの冷却効果が欲しいかもしれません。”
自分の地元の大和市泉の森ふれあいの森で初めて一般向けに広報する定例的な観察会(大和市生態系保護活用協議会主催「大和自然あんないクラブ」)の企画運営に協力してくれたのも横浜自然観察の森に出入りしていたちょっと怪しげで楽しい仲間たちでした。その後、観察会に集まった常連のお手伝いが大和市自然観察センターの開設準備や自然あんない部会運営などの担い手となっていきましたが、ボランティア協議会や市・財団との運営委員会を軌道に乗せるまでのコーディネートをしてくださったのが横浜レンジャー時代に組織マネジメントの面でお世話にった箱田敦只さんでした。
箱田元レンジャー。現在は全国でトコロジスト養成講座の講師を務める
各地のフィールドでボランティアや現地スタッフの育成のために野鳥の会レンジャーが現場で培ったノウハウやマインドを伝え広めることも大切な役割です。自分はその後、土日勤務の職場(社会教育主事)が長かったり家事・育児(PTA会長も県協議会安全互助会理事長含め17年間)などで忙しくフィールドでの活動は縮小していましたが多くのボランティアが様々な形で活動を継続・充実させてくれています。
友の会経験者が各方面で活躍する中、そうした人材育成の拡がり・普及やネットワークの核としても野鳥の会レンジャーは重要です。友の会の元顧問で平塚市博物館での学芸員実習でもお世話になった故・浜口哲一先生の提唱した「トコロジスト」の養成講座を大和市で継続してくださっているのも箱田さんです。市内の複数の緑地でトコロジストグループが活動するに至っています。
“こんなに活躍している箱田元レンジャーですが初めての紙芝居インタープリテーションであがらないようどんな手法をとっていたかは内緒です。”
30年以上前の黎明期からこれまで本当に多くのレンジャーと活動を進めてきました。友の会で現存する10プロジェクト(年間約500日分の活動)のほか過去に完了した活動も含め各時代の担当レンジャーの顔がたくさん浮かんでくる会員も多いのではないかと思います(総数1912名、ピーク時436名、現在約150名、会員の数だけレンジャーとの物語があります)。これからも新たなエピソードと共にフィールドの魅力を高めて、より多くの人を自然につなぎ、生きもののにぎわいを次世代へつないでいきたいと思います。よろしくお願いいたします。
PROFILE

山口 博一(やまぐち ひろかず)/横浜自然観察の森友の会会長
1970年神奈川県大和市生まれ。横浜自然観察の森での活動は大学在籍中の1989年から開始し、現在も横浜自然観察の森友の会会長として自然環境保全や市民活動の推進に取り組んでいる。
大学卒業後、大和市役所へ入庁、まちづくりや生涯学習など幅広い行政分野に携わる。大和市生態系保護活用協議会や大和自然あんないクラブ(現・ボランティア協議会自然とあそぼう班)の創設、「大和市自然観察センター・しらかしのいえ」開設・運営などにボランティアとして携わる。
2児の父として家事・育児を担いつつ、17年以上にわたり小・中学校のPTA会長等の地域活動を実践。都市住民と身近な自然との新たな関係を築き、自然を守り、愛する人を育てる活動を進め、持続可能な社会と世代間の公正の実現を目指し、フィールドでの活動充実に取り組んでいる。
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